2024年4月8日(月)アメリカ合衆国の南部から北東部にかけて広範囲で皆既日食が観察されました。
当サイトの管理人も、人生で一度は見たいと思っていたので、なんとか予定を調整して行って参りました。
実際に行ってみて気づいたことなども多々ありましたので、今後の自分自身や、どこかで日食を観察したいという方々のために個人的な記録を残しておこうと思います。
English version of this article:
Personal record of the total solar eclipse in the US on 8 April 2024
少々忙しいので暫定的な内容です。
記事は随時加筆していきます。(2024年4月17日)
更新しました。
目次
皆既日食の概要
2024年4月8日(月)の皆既日食は太平洋東部の赤道付近(南緯5度、西経160度付近)から始まり、メキシコ、アメリカ合衆国とカナダ東部で観察できました。アメリカ合衆国では12の州(テキサス、オクラホマ、アーカンソー、ミズーリ、イリノイ、インディアナ、オハイオ、ニューヨーク、ペンシルバニア、バーモント、ニューハンプシャー、メーン)で皆既日食が見られたほか、広範囲で部分日食が観察できたことからお祭り騒ぎの状態でした。
具体的な場所は以下のNASAのウェブサイトが詳しいです。
The 2024 Total Solar Eclipse – Scientific Visualization Studio, NASA (July 10, 2023)
https://svs.gsfc.nasa.gov/5123/
2024年4月28日時点でアクセス可
皆既日食は世界協定時(UTC)の 16:40頃に太平洋上で始まり、メキシコ西海岸マサトランでは UTC 18:10頃、テキサス州ダラスでUTC 18:43頃、ナイアガラの滝で UTC 19:20頃、カナダ東部のニューファンドランド島で UTC 19:45頃に皆既日食を見ることができました。UTC 19:55 頃に北大西洋上(北緯45度、西経25度付近)で終了しました。
観察場所
オハイオ州の Willard という町の貯水池で観察しました。
北緯41.062589度、西経82.667426度。
Google Map では以下とおり。
当初予定ではナイアガラの滝で観察しようと思っていたのですが、24時間前の時点での天気予報で雲天が予想されていました。
アメリカの気象局(NOAA)のウェブサイトで天気図、雨雲レーダー、水蒸気量の衛星画像、および全地球数値予報モデル(ECMWF, GFS)から総合的に判断して南西に進むことにしました。
皆既日食の時間は以下の NASA のウェブサイトから調べました。
Eclipse Explorer – NASA
https://eclipse-explorer.smce.nasa.gov/
2024年4月28日時点でアクセス可
Willard の町の予報は以下の画像のとおり。
NASAの予報が本当に正確で、実際に現地時間の 13:57 頃に太陽が本当にわずかに欠け始め、皆既日食も現地時間 15:12頃に始まりました。
観察道具
- 日食観察用グラス
- 2つあったので、ひとつはスマホに貼り付けました。
- レンタカー屋さんで無料でもらいました。Budget レンタカーに感謝です。
- 自作・ピンホール観察器
- 作り方や実際に観察した太陽の写真は以下のページ
【日食観察用】ピンホール観察器の作り方【部分日食・金環日食・皆既日食】
から見られます。
- 作り方や実際に観察した太陽の写真は以下のページ
- スマホのカメラ(露光・シャッター速度調整可能)
- タブレット(タイムラプスビデオ撮影)
観察用グラス、ピンホール観察器はともに、部分日食状態や、皆既日食になる前後に使うものだということを認識しました。
皆既日食中は全く何も見えません。
そしてコロナは肉眼で観察できました。
もし次があるならば、フィルムカメラとプロミネンス撮影用にフィルターもほしいなと思いました。
実際の写真
私の持っていったスマートフォンのカメラでも、手動でISO や露光時間などを買えられるモードを使うことで、太陽がすっぽり月の裏側に隠れて、周囲からコロナの炎が明るく輝いているのが見えました。
あまりの非日常な光景と、予想を上回る太陽の姿を見て、皆既日食中の3分50病患はずっと大興奮でした。
この写真はスマホのデジカメの露光調整をして、太陽レンズなどはなしの状態で撮影しました。
実際はコロナの部分がゆらゆら動いていたり、プロミネンスかな?と思われるまばゆい光が部分的に見えたりしていました。
タイムラプスビデオ
36倍速
感想
- とにかく神秘的
- 筆舌に作り難いとはまさにこのこと
- 本当に暗くなるのは皆既日食中の4分未満と、その前後30秒だけで、あとは薄暗い程度。
- 金環日食とは明らかに違う。
- コロナやプロミネンス(と思われる部分的に明るくまばゆく光る部分)が肉眼で見られるのはすごい。
- ちゃんとしたフィルムカメラ・一丸レフなどがほしくなる。
時系列写真
日食の始まりのアメリカ東部時間13時57分から15分経ったときの様子です。スマホのカメラに、日食観察用のグラスを付けた状態で撮影しました。
日食の開始予想時間(後述します)はかなり正確で、実際に13時57分には欠け始めたのが肉眼では見られました。
性能のよいカメラが欲しくなる瞬間でした。
ちなみにですが、日食は「月が太陽を隠す」というよりは「太陽が月の裏側に隠れる」と表現した方が正確です。みなさんもご存知のように、月の動きよりも太陽の動きの方が明らかに速いからです。
(わざわざ書くほどのことではないかもしれませんが、修正前の記事で私が間違って書いてしまっていたので備忘です。)
日食開始から50分、皆既日食の始まり(15:11:59)まであと25分の太陽の様子です。
じわじわと太陽が欠けていくのがわかります。
今回、太陽レンズといっしょにピンホール式の観察機も持っていったので、そちらの様子も随時アップロードしていきたいと思います。
皆既日食開始12分前の様子です。
見た目が三日月のようです。
だいぶ周囲は薄暗くも感じるのですが、夕方というよりは午後3時くらいの明るさでした。
実際に見てわかったのは、本当に周囲が暗いと感じるレベルになったのは、皆既日食中の約3分50秒間と、その前後の30秒程度のわずか5分たらずの時間だけでした。
太陽光がどれだけ強いのかを実感させられます。
上の写真はデジカメで、フィルターなどなしでそのまま撮影した写真です。
皆既日食に入る本当に直前の数十秒、太陽の端っこの一部だけの光が届いている様子です。
この太陽光線は特にギラギラと感じました。
上の写真は皆既日食中、露光の調整などをしない、フィルターをつけずにそのまま太陽を撮影したものです。コロナの部分だけでも十分明るく光っており、露光調整しないと太陽を隠す月が光に埋もれて写りません。
ちなみに、肉眼ですと、このページの一番上の写真のように、真ん中が黒く月に隠されているのがわかります。
実に神秘的ですが、科学的知識のない時代にこの現象は不気味で不吉だっただとうなと思います。
皆既日食中の周囲の様子です。
完全に真っ暗になっているわけではなく、周囲がぼんやりと明るくなっています。
これがコロナによる光源の影響なのか、日食の影響をうけていない周辺域からの太陽光が届いたものなのか、ちょっとわかりません。数十キロ先は普通の昼間と同じなので、後者なのではと思っています。
この光は日食の影響を受けていない周辺域の太陽光だとのことです。数十キロ先は普通の昼間なので、そこからの太陽光が届いているようです。太陽コロナは明るいとはいえ、周辺を明るく照らすほどの明るさではないようです。
比較のために、日食のだいぶ前の観察地点(オハイオ州 Willard 市貯水池)の写真です。
北米地域全体が曇りの予報の中、比較的晴れになる可能性が高い場所を選びました。
貯水池の堤のおかげで周囲より高くなり観察しやすくなっていたのは運がよかったでした。
皆既日食が終わる直前のダイヤモンドリングの状態です。
こうやって見ると本当に指輪のように見えます。
タイミングとしては、3枚上の写真(皆既日食になる直前)と同じような条件です。
日食中に見えた金星
実際の日食観察中は気づかなかったのですが、後で撮影した写真やタイムラプスビデオを確認したところ、太陽のそばに明るい星が写っていました。
星図(Star Walk)で確認したところ、金星でした。
当日の Star Walk の画面。アプリは旧版のものをずっと使っているので、最新のアプリの画面とは異なるかもしれません。
水星も近くにあったようですが、ちょうど内合の時期だったので暗くなってもまったく見えなかったようです。木星と土星は、その方角を注意して見れば観察できていたのかもしれません。
その他のメモ
皆既日食を観察する機会があったときのためのメモ書きも残しておきます。
- 本当に暗くなるのは、皆既日食中の時間(今回は約3分50秒)とその前後の30秒くらい。あとは意外と明るく、完全には暗くならない。
- 完全に暗くなっても、写真のように地平線の先は日が沈んだ直後のような空の色をしている。
- 昔の何の知識もない時代だったら、さぞかし不気味かつ不吉だっただろうなと思います。
- 皆既日食前の1時間くらい前から、気づかない程度に暗くなったからなのかカエルがいっせいに鳴き出した。
- 皆既日食中は肌寒かった。そのときは興奮して気づかなかったが。
- 皆既日食の間は、余裕があれば太陽以外の天体にも気を配れるといいかもしれない。今回は金星が映像に残っていたが、木星と土星は見ることができた可能性があった。
- アインシュタインの一般相対性理論が実際に証明されたのは、1919年の皆既日食中の写真(本来の位置関係なら太陽に隠れて見えないはずの星の光が太陽の重力によってゆがめられて写真に写った)だったことをこの時思い出した。
- 2012年5月に東京で金環日食が見られたが、皆既日食は金環日食とは全く違う。
- 金環日食は完全には暗くならない。
2024年4月12日作成
2024年4月17日更新
2024年4月28日更新
2024年6月6日更新