自然対数の真数を求める計算(e の指数計算)【計算尺の使い方34】


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「計算尺の使い方」まとめ

「常用対数の真数の計算」と「自然対数への変換」を組み合わせる

自然対数の真数を求めたい場合、つまり\( (\log_{e}{x} =) \ln x= a \) という式の \(a\) が既知の場合の \(x\)  を求めたい場合、「自然対数 ln (log_e) の計算」の計算と「常用対数の真数を求める計算」を組み合わせます。

計算の原理を簡単に解説します。
以下、自然対数を \( \ln x \) として記します。

計算尺には常用対数の目盛り(L尺)があります。これを利用するために、対数の底の変換公式

$$ \log_{b}{a} = \frac{\log_{c}{a}}{\log_{c}{b}} $$

を使って \( \ln x= a \) という式を常用対数で表してみます。

$$ \ln x = a \\ \Leftrightarrow  \frac{\log_{10}{x}}{\log_{10}{e}} = a \\ \Leftrightarrow  \log_{10}{x} = a \log_{10}{e}$$

ここで、\( \log_{10}{e} \approx 0.4343 \) または \( \log_{10}{e} \approx \frac{1}{2.303}\) なので、\(a\) に 0.434 を掛けるか2.303 で割った数値を求め、その数値をD 尺とL 尺を使って変換することで\(x\) を求めます。

「自然対数 ln (log_e) の計算」の計算では、常用対数の計算結果に2.30(より正確には 2.303)を掛けて自然対数を求めました。そのため、以下では2.303 で数値を割る方法での計算を行います。
(覚えておく数字が少ない方が、実用上は混乱しにくいです。)

ネイピア数\(e \) の指数計算と同じ

常用対数の真数を求める計算と同様、この指数操作はネイピア数\(e \) の指数計算と同じです。常用対数と10 の指数との間には、次式のような関係があるためです。
$$ \ln{x} = a \Leftrightarrow x = e^a $$

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計算例1 \( \ln{x}= 0.47 \)

\( x\) の値を求めます。この計算は\( e^{0.47} \) の計算と同じです。

(1)はじめに0.47 を2.303 で割ります。
D尺の「4.7」 にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の「2.303」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に0.47 ÷ 2.303 の答の数値「2.036」がでます。
概算で位取りをすると、0.5 ÷ 2 = 0.25 なので、0.47 ÷ 2.303 の答は「0.2036」です。
ここまでの計算で、\( \log_{10}{x}=0.2036\) という関係式を得たことになります。

(4)L 尺の「0.2036」にカーソル線を合わせます。
(細かく目盛りを読むことができなければ「0.204」に合わせます。)

(5)そのままD 尺(円計算尺では C 尺)の目盛りを読み、答が「1.599」であるとわかります。

計算例2 \( \ln{x}= 5.26 \)

\( x\) の値を求めます。この計算は\( e^{5.26} \) の計算と同じです。

(1)はじめに5.26を2.303 で割ります。
D尺の「5.26」 にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の「2.303」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に5.26 ÷ 2.303 の答の数値「2.284」がでます。
概算で位取りをすると、5 ÷ 2 = 2.5 なので、5.26 ÷ 2.303 の答は「2.284」です。
ここまでの計算で、\( \log_{10}{x}=2.284\) という関係式を得たことになります。

(4)(3)で得た数「2.284」を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分け、\( 2.284 = 2 + 0.284\) とします。計算尺では 0.284 の部分を計算します。
L 尺の「0.284」にカーソル線を合わせます。

(5)そのままD 尺(円計算尺では C 尺)の目盛りを読み、答の有効数字部分が「1.923」だとわかります。

(6)位取りをします。
(5)の計算によって \( 0.284 = \log_{10}{1.923} \) であることがわかりました。また、(4)で分けた整数部分の2 を常用対数で表すと \( 2 = \log_{10}{10^2} = \log_{10}{100}\) です。したがって、
\(2 + 0.284 = \log_{10}{100} + \log_{10}{1.923} \)
\( = \log_{10}{(100 \times 1.923)} = \log_{10}{192.3} \)
となることがわかります。
以上より、この計算の答は「192.3」です。

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計算例3 \( \ln{x}= -1.93\)

\( x\) の値を求めます。この計算は\( e^{-1.93} \) の計算と同じです。

(1)はじめに -1.93 を2.303 で割ります。
D尺の「1.93」 にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の「2.303」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に1.93 ÷ 2.303 の答の数値「8.38」がでます。
概算で位取りをすると、-2 ÷ 2 = -1 なので、-1.93 ÷ 2.303 の答は「-0.838」です。
ここまでの計算で、\( \log_{10}{x}=-0.838\) という関係式を得たことになります。

(4)(3)で得た数「-0.838」を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分けます。
-0.838 の場合、\( -0.838 = -1 + 0.162\) となります。小数部分を0 以上1 未満とすることに気を付けましょう。計算尺では 0.162 の部分を計算します。
L 尺の「0.162」にカーソル線を合わせます。

(5)そのままD 尺(円計算尺では C 尺)の目盛りを読み、答の有効数字部分が「1.452」だとわかります。

(6)位取りをします。
(5)の計算によって \( 0.162 = \log_{10}{1.452} \) であることがわかりました。また、(4)で分けた整数部分の2 を常用対数で表すと \( -1 = \log_{10}{10^{-1}} = \log_{10}{0.1}\) です。したがって、
\(-1 + 0.162 = \log_{10}{0.1} + \log_{10}{1.452} \)
\( = \log_{10}{(0.1 \times 1.452)} = \log_{10}{0.1452} \)
となることがわかります。
以上より、この計算の答は「0.1452」です。

双曲線関数の計算ができる

ネイピア数の指数計算ができるということは、次の公式を使って双曲線関数も計算できます。

$$ \sinh{x} = \frac{e^x – e^{-x}}{2} \\ \cosh{x} = \frac{e^x + e^{-x}}{2}$$

双曲線関数に限らず、ネイピア数\(e \) の指数は自然科学・工学の様々な分野で計算に登場するので、関数電卓やコンピューターが無かった時代、この計算は大変重要だったのではないかと思います。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

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