任意の底を持つ対数の計算【計算尺の使い方35】

circular slide rule/円形計算尺


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「計算尺の使い方」まとめ

対数の底の変換公式を使う

「自然対数 ln (log_e) の計算」「自然対数の真数を求める計算(e の指数計算)」でも紹介した対数の底の変換公式を使えば、任意の底を持つ対数を計算することができます。
ある数値 \(a\) の、任意の値 \(b\) を底とする対数は、対数の底の変換公式を使って次のように常用対数で表すことができます。

$$ \log_{b}{a} = \frac{\log_{c}{a}}{\log_{c}{b}} $$

計算尺では常用対数の計算を基本として、上に示した対数の底の変換公式を利用することで任意の底を持つ対数の計算をします。
上に示した対数の底の変換公式の \(c = 10\) とすることで、\( \log_{10}{a} \) と \(\log_{10}{b}\) を個別に計算して、最後に\( \log_{10}{a} \div \log_{10}{b}\) を計算することで解を得られます。

気を付ける点は、1未満の常用対数が負になることです。
この場合は「常用対数 log_10 の計算」の計算例3も参考にしてください。

計算例1 \( \log_{2}{5} \)

\( \log_{10}{5} \) と \(\log_{10}{2}\) をそれぞれ計算し、最後に\( \log_{10}{5} \div \log_{10}{2}\) を計算します。

(1)はじめに \( \log_{10}{5} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「5」 にカーソル線を合わせます。

(2)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答として「0.699」を得ます。
※1 以上 10 未満の常用対数の答の整数部分は「0」です。

(3)続けて \( \log_{10}{2} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「2」 にカーソル線を合わせます。

(4)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答として「0.301」を得ます。
※1 以上 10 未満の常用対数の答の整数部分は「0」です。

(5)\( \log_{10}{5} \div \log_{10}{2}\) として、(2)と(4)で得た計算結果から 0.699 ÷ 0.301 を計算します。
D尺の「6.99」 にカーソル線を合わせます。

(6)C尺の「3.01」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(7)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に答の数値「2.322」がでます。
概算で位取りをすると、\(0.7 \div 0.3 = 2.333 \cdots \)  なので、この計算の答は「2.322」です。

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計算例2 \( \log_{21}{586} \)

\( \log_{10}{586} \) と \(\log_{10}{21}\) をそれぞれ計算し、最後に\( \log_{10}{586} \div \log_{10}{21}\) を計算します。

(1)はじめに \( \log_{10}{586} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「5.86」 にカーソル線を合わせます。

(2)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答の小数点部分として「0.768」を得ます。
この結果と整数部分を足し合わせて\( \log_{10}{586} \)  を求めます。
\( \log_{10}{586}\)\(= \log_{10}{5.86} + \log_{10}{10^2}\)
\( = 0.768+ 2 = 2.768\) です。

(3)続けて \( \log_{10}{2.1} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「2.1」 にカーソル線を合わせます。

(4)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答の小数点部分として「0.322」を得ます。
この結果と整数部分を足し合わせて\( \log_{10}{21} \)  を求めます。
\( \log_{10}{21}\)\(= \log_{10}{2.1} + \log_{10}{10}\)
\( = 0.322+ 1 = 1.322\) です。

(5)\( \log_{10}{586} \div \log_{10}{21}\) として、(2)と(4)で得た計算結果から 2.768 ÷ 1.322 を計算します。
D尺の「2.768」 にカーソル線を合わせます。

(6)C尺の「1.322」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(7)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に答の数値「2.095」がでます。
概算で位取りをすると、3 ÷ 1.5 = 2 なので、この計算の答は「2.095」です。

計算例3 \( \log_{6.7}{0.04} \)

\( \log_{10}{0.04} \) と \(\log_{10}{6.7}\) をそれぞれ計算し、最後に\( \log_{10}{0.04} \div \log_{10}{6.7}\) を計算します。

(1)はじめに \( \log_{10}{0.04} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「4」 にカーソル線を合わせます。

(2)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答の小数点部分として「0.602」を得ます。
この結果と整数部分を足し合わせて\( \log_{10}{0.04} \)  を求めます。
\( \log_{10}{0.04}\)\(= \log_{10}{4} + \log_{10}{10^{-2}}\)
\( = 0.602 – 2 = -1.398\) です。

(3)続けて \( \log_{10}{6.7} \)  を計算します。
D尺(円計算尺では C 尺)の「0.826」 にカーソル線を合わせます。

(4)そのまま L 尺の目盛りを読み取り、答として「0.826」を得ます。
※1 以上 10 未満の常用対数の答の整数部分は「0」です。

(5)\( \log_{10}{0.04} \div \log_{10}{6.7}\) として、(2)と(4)で得た計算結果から -1.398 ÷ 0.826 を計算します。
D尺の「1.398」 にカーソル線を合わせます。

(6)C尺の「8.26」がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(7)C尺の基線とカーソル線を合わせ、D尺に答の数値「1.693」がでます。
概算で位取りをすると、-1.5 ÷ 1 = -1.5 なので、この計算の答は「-1.693」です。

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