日本でもいわゆる千円カットの床屋さんで済ませていたのだが、イギリスに来てからはそもそも床屋に行かずに自分で髪を切るようになった。
とにかく何もかもが日本よりも高い。値段の高さを気にしたらそもそもイギリスで、というか今や日本以外の先進国で生きることができないのかもしれないが、それにしても節約できるのであれば節約はしたい。
イギリスにも日本の千円カットに近い安い値段の床屋さんはある。中東系の床屋さんでカットのみだと8ポンド(約1,600円)というメニューがあるのだが、仕上がりはあまり良くないらしい。後頭部などは髪型がギザギザになってしまうらしい。お店の看板に表示されている仕上がりイメージの写真はどれもGIカットみたいで頭頂部だけ髪がフサフサという感じなので、そのメニューだとバリカンしか使わないのかもしれない。安かろう悪かろうといえばそれまでなのだが、わざわざ挑戦する勇気がない。
床屋で切ってもらってもどうせ仕上がりが日本ほど良くないのであれば、自分で切ればいいのだ。持ってきた電動シェーバーのアタッチメントで後頭部や側頭部は刈り上げにすることにした。日本でも夏場の暑い時期などは刈り上げにしてもらっていたので何も問題はない。前髪など鏡で見える範囲は、普通のハサミで切っている。
ただ、実際にシェーバーで髪を切ってみて厄介だと気づかされたのは、後頭部と頭頂部の境目あたりの髪だ。髪の毛が浮いてしまってシェーバーで切れないため、そのままだとカッパのような髪型になってしまう。なので指で髪をつまんでくるくるまとめて、明らかに長い部分をハサミで切るという作業を地道に何度も繰り返す必要がある。それでも一部の髪は長いまま残っていることがあるのだが、それも気づいたときに切ればいい。
この方法で髪を切ってすぐ、他の日本人にあったときに自分で切ったとは気づかれなかった。海外の床屋はそんなものだから、と最初は言われた。お金を払ってもそれならば、髪は自分で切った方が良いと確信した。
他の日本人はどうしているのだろうかと聞く機会があったが、2つに分かれた。
まずは私と同じように、自分で切る方法だ。自分で切るといっても、後頭部は恋人や友達に切ってもらうという話だった。やはり一人ですべては難しい。
私の住んでいる街はロンドンからさほど遠くもないので、日本人がいる床屋・美容院に行くという選択肢も確かにある。ロンドンの理容室は60ポンド(約1万2千円)と高めだし交通費もかかるが、女性なら日本の理容室も7、8千円かかる。日本で毎月行っていたのを2か月に1回の頻度に減らすなどして節約しているという話を聞いた。
仕上がりの良し悪しはともかく、床屋さんの値段が高いということは、その分労働の対価を支払っているということだ。全体的にイギリスという国は(もしかしたら他の欧州の国も)消費者のわがままを聞くというよりは労働者の負担を減らすことに重きを置いているといえそうだ。
散髪に限らず、この姿勢はイギリスで生活していると様々な場面で垣間見ることになる。
さて、トップにある画像のように、日本の床屋さんでもお馴染みの赤白青のストライプの看板(サインポール、英語では barber’s pole)はイギリスでも健在だ。だが必ずしも日本と同じというわけでもないようで、赤と白だけのものを見かけたこともあれば、看板が無くハサミのマークの看板だけが表示されていることもある。