光の波長も測定できる手作り分光計を作ろう!夏休みの自由研究にも

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光の波長が測定できる分光計組み立てキットの販売を始めました!
当サイトオリジナルのペーパークラフトです。
以下のリンク先からご購入いただけます。

【商品販売】光の波長の測定ができる分光器組み立てキット
(2021年7月17日追加)

 

最近、光の波長を測定することもできる分光計の作り方を知りました。
光の波長を家庭で手軽に測定できる!それができて実生活に何の役に立つかはわかりませんが、興味がある人はいるはず。
そう考え、私なりにアレンジした可視光線の波長を測定できる手作り分光計の作り方を公開します。

夏休みの自由研究、学校での科学関係の部活動や自由学習にも色々活用できると思います。
興味のある方はぜひお試しください。
ただし、内容はやや難しめ(小学校高学年以上くらい?)かもしれません。

おことわりとお願い

以下、具体的な作り方を紹介しますが、あくまで素人が個人的に作ったものをベースにしていますので、自己責任での製作をお願いいたします。このウェブサイトを見て行ったことによるいかなる不利益(工作を始めた結果カッターで怪我をした、等の事故)についても、補償いたしかねます。また、作ってみたがうまくいかない、等の作り方に関するお問い合わせにも応じられません。申し訳ありません。
逆にいえば、みなさまの裁量で自由に工夫して作っていただけます。これをきっかけに興味を持たれた方は、ぜひ色々アレンジしてよりよい分光計を作ってみてください!
光の波長が調べられるので、理科年表に記載の元素スペクトル線の波長と比較して色々探究できると思います。

もしもよろしければ、実際に作ってみた感想や活用事例などを、このページの最後のコメント欄にお寄せください。
個別のご質問には応じられませんが、コメント欄に「〇〇の部分が難しかった/わかりにくかった」等のコメントをいただければ、時間のある時に記事の内容を詳しくしたりして、改善して参りたいと思います。
ご協力いただければ嬉しいです。

そもそも分光計って何ができるの?

太陽光、電球、蛍光灯などの光は、実は様々な色の光が混ざっています。
次のウェブサイトが手短で図もありわかりやすいと思います。

スペクトルとは・・・?

分光計は、様々な色が混ざった状態の光を色ごとに分けて、さらに分けられたそれぞれの色の光がもつ「波長」を測ることができるものです。

手作り分光計の材料

  • A3の厚紙・工作用紙2枚
  • 方眼紙1枚
  • ボンド・のり
  • セロハンテープ
  • ビニールテープ(黒がおすすめ)
  • 回折格子シート(1000本/mm)

それと、当サイトの以下のダウンロードページから、工作用紙の型枠ファイル(PDF)をダウンロードしてください。「手作り分光計の型枠」からPDFファイルがダウンロードできます。

波長も調べられる手作り分光計作成のための関係ファイル

このほかに道具として

  • カッター
  • カッター台
  • はさみ
  • ピンセット

等が必要です。

材料費は全部で2千円くらいです。
回折格子シートが高めですが、これがないと光を分解することができません。
また、このページで紹介する作り方では、回折格子シートは「1000本/mm」のものを使う必要があります。違うものを使うとうまく観察できませんのでご注意ください。

ウェブサイトの管理人は試していないのでうまく作れるかはわかりませんが、インターネットでは120円で小さな 1000本/mm の回折格子シートを売っていました。5 cm × 5 cm の大きさがあればこのページで紹介している手作り分光計を作るには十分な大きさなので、1、2個くらいしか分光計を作らない方でより安く作るのに挑戦したいという方は以下のものもお試しください。

作り方

(1)分光計本体の作成

光の波長をできるだけ正確に測定するためには、分光計の本体をできるだけゆがみなくきれいに組み立てる必要があります。その点を注意して組み立ててください。

まずはA3くらいの大きさの工作用紙か厚紙を2枚用意します。

この工作用紙のうち1枚に、本体の型枠を正確に書き写してください。
型枠は以下の当サイトダウンロードページの「手作り分光計の型枠」からPDFファイルでダウンロードできます。

波長も調べられる手作り分光計作成のための関係ファイル

型枠を書き写したら、はさみ等で型枠を切り出してください。
あとでスリットや回折格子シートをとりつけるための穴や、目盛り窓になる部分を切り抜く必要がありますが、この部分は定規をあてながらカッターで切る等の工夫をしてできるだけ丁寧にきれいに切り抜いてください。
この部分がガタガタだと波長測定の精度が落ちてしまいます。

また、もう1枚の工作用紙からは 200mm × 250mm の大きさの紙を切り出してください。こちらは、のりしろ等はいりません。

こんな感じに切り出せると思います。

まずは大きな2つの部材から、分光計本体の箱部分を作ります。左側の大きな部材を折り線で折り曲げます。
ここで、工作用紙をそのまま折り曲げてしまうとゆがみができてしまい、きれいな箱になりません。なのであらかじめ折り線部分の表面にカッターで軽く切れ目を入れておきます。こうすると工作用紙を折り曲げるときにゆがみができにくくなり、精度のよい箱を組み立てることができます。

のりしろにつけるボンドは薄く塗るのが良いです。のりが多すぎると、のりに含まれる水分で箱がゆがんでしまいます。
のりづけした部分はどうしてもわずかな隙間ができてしまい、そこから箱の中に光が入ってしまいます。光が入らないように角の部分にビニールテープを貼ります。

これで分光計の本体の完成です。

こんな感じに仕上がると思います。

(2)スリットの作成

上の写真のように、真ん中を長方形にくり抜いた 20mm × 20mm の工作用紙「スリット固定用型枠」と黒い紙を使ってスリットを作ります。
黒い紙は、わざわざ黒画用紙を買わなくても、上の写真のように余った紙(方眼紙の一部)をマジックペンで黒く塗ったものを使えば十分です。

黒い紙を「スリット固定用型枠」の穴より大きめに切りだします。その後、黒い紙を定規をあてたカッター等できるだけまっすぐ2つに切り分け、セロハンテープで型枠に貼ってスリットを作ります。

上の写真のような感じになります。
スリット・・・つまり黒い紙の切れ目の部分の幅は、大きすぎるとあとで観察するスペクトル線がぼやけてしまいますし、細すぎるとスペクトル線が暗くなってしまいます。
このあたりは個人の感覚にもよりますので、実際に作って試してみてください。

作ったスリットを分光計本体にビニールテープで貼り付けます。
スリットを取り付けるのは、長方形の穴を開けた方、すぐ近くに目盛窓を開けた側の穴です。
気を付けてください。

スリットはできるだけ分光計本体の短辺に対して平行になるように取り付けるのが良いです。

また、あらかじめ分光計本体のスリットを取り付ける穴の周りにビニールテープを貼っておくと、あとで「スリット型枠」を簡単に取り外すことができるので、幅の異なる複数の「スリット型枠」を作っておいて交換することもできます。
ただし、スリットを交換できるようにする場合は、スリットの穴の位置がずれないような目印を分光計本体につけておく工夫が必要です。

(3)目盛窓の作成

スペクトル線の波長を調べるのにとても重要な目盛窓の作成です。

はじめに、方眼紙に次のような目盛りを作ります。目盛りはスリットの位置を 0mm とし、60mm から 220mm の間で振ります。
ダウンロードページの「手作り分光計の型枠」のPDFファイルにも載せてあるので参考にしてください。

この方眼紙をはさみで切り、スリットの位置、つまり 0mm の位置がスリットの中央に一致するようにして、分光計本体にセロハンテープで貼り付けます。
光の波長を調べるときには、スリットからの距離が何mm になるかがとても重要です。できるだけ正確になるように気を付けてください。

スリットと反対側の穴から分光計の中をのぞき込むと下の写真のようになります。
目盛窓からうまく目盛りが読み取れるかどうかを確認してください。

目盛窓から目盛りがうまく読み取れれば、方眼紙のスリット付近の部分(0mm~40mmくらいまでの部分)は不要なので切り取ってしまって大丈夫です。

目盛り窓の部分を外からみると、上の写真のようになります。

この次に、目盛り窓の光量調整フード(30mm × 200mm の厚紙)をビニールテープで下の写真のようになるように貼り付けます。目盛窓の部分を覆い隠せるようにしてください。

こんなのいるの?と思われるかもしれませんが、スペクトル線を実際に観察するとき、目盛窓の目盛りを読み取るのにとても役立ちます。

(4)回折格子シートの取り付け

回折格子シートを分光計本体に取り付ければ、手作り分光計の完成です。

真ん中を正方形にくり抜いた 20mm × 20mm の工作用紙「回折格子フィルム固定型枠」と、この型枠の真ん中の穴よりもすこし大きめに切った回折格子シート(回折格子フィルム)を用意します。
回折格子シートは素手で触らないでください。正しく観察できなくなります。はさみで切り取る際も、ピンセットを使って直接指で触れないように注意してください。

回折格子シートはセロハンテープで「回折格子フィルム固定型枠」の裏側に貼り付けます。

回折格子シートを型枠に貼り付けたら、次は型枠を分光計本体に取り付けます。
回折格子シートが型枠と分光計本体との間に位置するように、型枠の裏表に注意してください。

回折格子シートには向きがあります。
「回折格子フィルム固定型枠」を取り付けるときは、最初はセロハンテープ等で仮止めして、分光計をのぞき込んで向きを確認してください。

下の写真は、回折格子シートを分光計に取り付け、スリットから蛍光灯の光が入る状態にして分光計をのぞいた時の様子です。
下の写真のように、スペクトル線(左側に見える色がついた光の線)が目盛窓の目盛りと重なるように、「回折格子フィルム固定型枠」を回転させて、向きを調節してください。

向きが調節できたら、ビニールテープでしっかり固定します。

これで分光計の完成です!

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スペクトル線の波長測定の方法

この手作り分光計の一番のポイントは、スペクトル線の波長が観察できることです。
実際に作った分光計で光の波長を調べてみましょう。

・・・といっても、実際に波長を調べるにはちょっと面倒な計算が必要になります。そこで、Microsoft 社のエクセルで波長を簡単に計算できるようなファイルを作りました。
以下の当サイトダウンロードページの「手作り分光計の活用エクセルファイル」からダウンロードできます。

波長も調べられる手作り分光計作成のための関係ファイル

「エクセルなんて持ってないよ!」という方は、エクセルと互換性のあるフリーソフト、例えばオープンオフィス等をダウンロードして使ってみてください。ただし、エクセル以外でのファイルの動作確認はしていませんので、あらかじめご了承ください。

エクセルファイルを開き、左下にある「計算シート」のタブを選択すると、次のようなシートが開きます。

このシートを使えば観察したスペクトル線の波長を計算できます。

ただし、最初に準備が必要です。
みなさんが作った手作り分光計の、スリットと回折格子との間の距離をできるだけ正確に測り、計算シートの一番上にある赤枠「スリットと回折格子との距離」に入力してください。

上の写真のように、定規やメジャーで分光計のスリットと回折格子シートがある側の短辺をできるだけ正確に測ってください。難しいとは思いますが、できれば 0.1mm の単位で測定できれば望ましいです。

それでは、試しに蛍光灯を見たときのスペクトル線で一番右側に見える細くて濃い青のスペクトル線の波長を調べてみます。

スペクトル線の位置は見方(視線の向き)によって数mmずれてしまいますし、写真で撮るとどうしても実際に自分の目で見た値とは異なってしまいますが・・・

おおよそ目盛窓で 97mm くらいのところに濃い青のスペクトル線が見えた、と思いました。ちなみに、私が作成した手作り分光計のスリットと回折格子シートとの距離は 200.2 mm くらいでした。
なので、次のように計算シートに入力してみます。

すると、「スペクトル線の波長」の部分に「436」と表示されます。
つまり、蛍光灯のスペクトル線のうち、濃い青の波長は 436 nm だということがわかりました。

理科年表でスペクトル線の波長を調べてみると、水銀元素は 435.8335 nm の明瞭なスペクトル線を放出することが記載されています。つまり、蛍光灯の光には水銀元素の放つ光が含まれていることがわかります。

蛍光灯にも色々な種類がありますが、蛍光灯には水銀ガスが封入されているものがあるので、我が家の蛍光灯はそうだった、ということがわかりました。

このように、スペクトル線が見える位置の目盛窓の目盛りを読み、計算シートに入力することで、わりと正確に光の波長を測定することができます。

スペクトル線の波長早見図

といっても、いちいち計算するのは面倒だとか、だいたいの波長がさっとわかればいいよ、という方もいると思います。なので、エクセルファイルの中には「波長早見図」のグラフも準備しました。

このグラフの黒い曲線が、スペクトル線が観察された位置(目盛窓の目盛り)とスペクトル線の波長を表します。
このグラフを使う前に、計算シートの一番上にある「スリットと回折格子との距離」に入力してください。より正確なグラフが表示されます。

印刷して手作り分光計に貼っておけば、屋外でスペクトル線を観察したとき、すぐにだいたいの波長を知ることができます。(それがどのような役に立つかはわかりませんが・・・。)

実際に色々なスペクトル線を観察してみよう

この手作り分光計のいいところは、上の蛍光灯の例のように、スマートフォンなどのカメラでスペクトル線を撮影することができるところです。
光源が暗かったりすると少し難しいですが、自由研究等の発表でも自分がみたスペクトル線を写真で示すこともできるのが利点です。

ぜひ手作り分光計を作ったら、色々なスペクトル線を見てみましょう。
また、波長がわかったら理科年表の元素スペクトル線のページと比較することで、どのような元素から放出された光(光が吸収される場合もあります)かがわかります。

以下、私が実際に見た例を紹介します。

  • 太陽

連続したスペクトル線が観察できます。
写真には写っていませんが、よく観察すると色々なところに黒くて細い線(フラウンホーファー線)があります。この線の波長を調べて理科年表で元素を調べてみると、色々面白いですよ。

フラウンホーファー線の波長を調べ、理科年表で対応する元素を調べ、フラウンホーファー線ができる理由を考えて調べてまとめる。これだけでかなり立派な自由研究の完成です。

  • 近所の主要道路の橙色のランプ

ナトリウム灯かと思いきや、ナトリウム灯の特徴である2本の橙色の線スペクトルが見られませんでした。
でもよく見ると、ナトリウムの波長にあたる部分が暗くなっているので、ナトリウムの吸収スペクトルが観察できていることになります。
最近の電灯にはどのようなものが使われているかよくわかっていないのですが、少なくとも何らかの形でナトリウムが使われているのは予想できました。

身近にある光源として、スマートフォンの画面を見てみるのもおもしろいです。例えば懐中電灯アプリの中にはスマートフォンの画面全体を特定の色で表示して光らせる機能のあるものがありますが、スマートフォンの画面を黄色、紫色、オレンジ色等にしたとき分光計ではどのように光が見えるか?
果たして黄色い光は黄色いスペクトル線が観察されるか?実際に試してみて、理由を考えてみればそれだけでも簡単な自由研究になります。

身近にある色々な光るものを分光計で調べてみましょう。

2021年7月17日更新

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