P尺を用いた様々な関数の計算
P尺は \( y = \sqrt{1 – x^2}\) という形の関数を素早く計算するための目盛りです。これについては「P尺を使った計算1(基本)」で詳しく紹介しています。
一方で、P尺と D尺以外とを組み合わせることで様々な形の関数を素早く計算することができます。
このページでは以下の形の関数の計算方法を紹介します。
- \(1 / \sqrt{1 – x^2}\) (P尺と CI尺を使用)
- \(1 – x^2\) (P尺と A尺を使用)
- \(1 / (1 – x^2)\) (P尺と BI尺を使用)
- \( \sqrt{1 – x}\) (P尺と A尺を使用)
————————————————————
広告/ Advertisement
位取りについて
位取りは、\(x\) の値が必ず 0以上 1以下であることを利用して概算します。
例えば \(1 / \sqrt{1 – 0.5^2}\) を計算したい場合は、 \( \sqrt{1 – 0.5^2} = \sqrt{0.75} \) なので、答が 1より大きく 10よりは小さいであろうことがわかります。
しかし実際には、それぞれの尺の目盛りをそのまま読めば答が得られる場合が多いので、そうでない場合だけを覚えておけば問題ありません。
このページの例では、P尺と A尺を組み合わせて使う場合( \(1 – x^2\) と \( \sqrt{1 – x}\) の計算)の位取りの方法を覚えておけば計算に困りません。
1. \(1 / \sqrt{1 – x^2}\) の計算
P尺と CI尺とを組み合わせることで、\(1 / \sqrt{1 – x^2}\) の計算ができます。
計算の流れは下の図のようになります。
はじめに、CI尺の基線(1 または 10)を D尺の基線に合わせます。
次に \(x\) の値として P尺にカーソル線を合わせ(図の ①)、そのまま CI 尺の目盛りを読む(図の②)ことで答が得られます。
ポイント
- \(x\) として置けるのは P尺の目盛りの範囲(0 ~ 0.995)です。
- 位取りは不要です。CI 尺の目盛りをそのまま読みます。
計算例1 \(1 / \sqrt{1 – 0.692^2}\)
(1)最初に、CI尺の基線(1 または 10)を D尺の基線に合わせます。
(2)P尺の 0.692にカーソル線を合わせます。
(3)そのまま CI尺の目盛りを読むことで答の「1.384」を得ます。この計算では位取りは不要です。
2. \(1 – x^2\) の計算
P尺と A尺とを組み合わせると、\(1 – x^2\) が計算できます。
計算の流れは下の図のようになります。
\(x\) の値として P尺にカーソル線を合わせると(図の ①)、A尺に答の有効数字が示されます(図の②)。
位取りとして、A尺に示された数値を 0.01倍すると答が得られます。
ポイント
- \(x\) として置けるのは P尺の目盛りの範囲(0 ~ 0.995)です。
- 位取りは、A尺に示された数値に 0.01を掛けます。
計算例2 \(1 – 0.881^2\)
(1)P尺の 0.881にカーソル線を合わせます。
(2)A尺に答の有効数字「22.4」が示されます。
(3)位取りをします。22.4 を 0.01倍して答の「0.224」を得ます。
————————————————————
広告/ Advertisement
3. \(1 / (1 – x^2)\) の計算
P尺と BI尺とを組み合わせて、\(1 / (1 – x^2)\) を計算できます。
計算尺によっては、P尺はあっても BI尺がないものもあります。
私の手元にある Faber-Castell の 2/82 には P尺と BI尺のどちらもありますが、Faber-Castell の 2/83 N には BI 尺がありません。
BI 尺がない計算尺では、内尺をひっくり返して入れ替えることで B尺を BI 尺として使うことができます。
この方法については「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」の「S 尺とSI 尺、T 尺とTI 尺の入れ替えについて」でも紹介しています。
計算の流れは下の図のようになります。
はじめに、BI尺の基線を D尺など外尺にある目盛りの基線に合わせます。
次に \(x\) の値として P尺にカーソル線を合わせ(図の ①)、そのまま BI 尺の目盛りを読む(図の②)ことで答が得られます。
ポイント
- \(x\) として置けるのは P尺の目盛りの範囲(0 ~ 0.995)です。
- 位取りは不要です。BI 尺の目盛りをそのまま読みます。
計算例3 \(1 / (1 – 0.759^2)\)
(1)最初に、BI尺の基線(例えば左基線の 「100」)を D尺の基線(左基線ならば「1」)に合わせます。
(2)P尺の 0.759にカーソル線を合わせます。
(3)そのまま BI尺の目盛りを読むことで答の「2.36」を得ます。この計算では位取りは不要です。
4. \(\sqrt{1 – x}\) の計算
P尺と A尺を組み合わせることで、\(\sqrt{1 – x}\) を計算することもできます。
計算の流れは下の図のようになります。
\(x\) の値として A尺にカーソル線を合わせます(図の ①)。ただし、カーソル線を合わせる A尺の値は \(x\) を100倍した値です。
そのまま P尺の目盛りを読む(図の②)ことで答が得られます。
ポイント
- \(x\) として置けるのは A尺の目盛りの範囲の 100分の 1(0.01 ~ 1)です。
- 位取りとして、計算の初めに与える \(x\) の値を 100倍します。P尺の目盛りはそのまま読みます。
計算例4 \(\sqrt{1 – 0.286}\)
(1)\(x = 0.286\) を 100倍すると 28.6 なので、A尺の 28.6にカーソル線を合わせます。
(2)そのまま P尺の目盛りを読むことで答の「0.845」を得ます。
————————————————————
広告/ Advertisement
その他の形の関数も計算できる
以上で紹介した4つの関数形以外にも、\(\sqrt{1 – (1 / x)}\) や \(\sqrt{1 – (1 / x^2)}\) の計算もできます。
また、K尺を組み合わせることで \(\sqrt{(1 – x^2)^3}\) と \(\sqrt{1 – x^{2/3}}\) を計算することもできます。
計算結果の位取りに注意が必要ですが、このような関数の値をすぐに求めたい場合には便利だと思います。
これらの関数についても計算方法を紹介したいと思いますが、特に位取りの説明に時間がかかりそうです。
計算方法が気になる方は以下に紹介する参考資料(英語)をご覧いただければと思います。
参考資料の情報
この記事の執筆では、以下のウェブサイトで公開されている PDF 資料「13 – Pythagorean (P) Scale」を参考にしました。
ウェブサイト制作者・管理者の David M. Peterson 氏に感謝申し上げます。
ROCK-MITE EXPEDITION
How to Use a Slide Rule (PDF)
https://www.qsl.net/ke4qdm/pdfmanual.htm
計算尺に関する記事一覧
当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。
久しぶりの五月蝿ことJochenです。
今回のlectureが6月中にアップされていたのは気づいていたのですがコロナ禍でお疲れモードに突入していたため今日まで拝読出来ずにいました。
本日やっと拝読させて頂きましたが今回も大変ためになる講義で楽しく読ませて頂きました。
とてもアタマの中が⁇⁇かつ興味深かったのは前回の講義ではXをD尺においてP尺上に答えを得たのに今回はXをP尺においていた点です。
最初XをP尺上におくとは何かの間違えではないかと思いましたが自分で色々な数値で試してみるとXをどちらの尺においても他方の尺に答えが得られることに気づきました。
何故そうなるのか数学的に理解出来ていませんが今はこの事実だけで十分です。
今回が最後のlectureになるのでしょうか。
だとしたら大変名残惜しい気持ちです。
もっともっと面白い計算を教えて頂きたかったですが一つの節目ではありそうですので感謝の意を表したいと思います。
これまでの素晴らしいlecture本当にありがとうございました。
Jochen 様
当サイト管理人のよしじでございます。
こちらこそ、メッセージをいただいて 1か月以上もご返信できておらず、大変失礼いたしました。
Jochen 様もコロナ禍でお忙しかったのですね。
そして、わざわざ大変な中お礼のコメントをいただきましたこと、大変嬉しく思います。
Jochen 様から色々ご指摘をいただいたおかげで、記事の内容がよりわかりやすくなったと思っております。
おかげさまで、計算尺の使い方を調べるために当サイトにアクセスする方がここ半年でかなり増えております。
私もまだまだ記事は執筆したいと考えておりまして、特に計算尺の原理についてはいつか解説したいと思っております。
本業があり最近は記事を書く時間を作るのも難しいのですが、時々当サイトを訪れていただけますと幸甚でございます。
今後も当サイトのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。