内尺の目盛りの交換について
「二乗を含む掛け算・割り算」でも紹介していますが、内尺の目盛りの交換について再度確認しておきましょう。
計算尺の多くは、裏と表にそれぞれ目盛りが振られています。
計算の種類によっては、内尺の目盛りだけを裏表交換する必要がある場合があるので、それについて紹介いたします。
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例えば、この後の計算例にある、D 尺、C 尺、A 尺の3 種類を計算で使いたい場合です。
計算尺の表面を見ると、次の写真のようにD 尺とC 尺はありますが、A 尺がありません。
一方でこの計算尺を裏返すと、次の写真のようにD 尺とA 尺はありますが、C 尺がありません。
このような時は、次のようにまず内尺を取り外します。
そして内尺だけを裏返して外尺に付け直すことができます。その結果、次の写真のようにD 尺、C 尺、A 尺の3 種類の目盛りがそろいます。
円形計算尺のように、内尺の交換ができない計算尺もあります。このような計算尺では、一度D 尺などで計算結果の答を出してその結果をメモし、計算尺を裏返して計算をし直すといったことが必要になります。
内尺にある「B 尺」について
二乗を含む割り算では、B 尺を使うと計算が容易になる場合があります。
B 尺の目盛りはA 尺と同じです。違いは、B 尺は内尺に目盛りが振られています。
計算尺によってはB 尺がないものもありますので、B 尺がない場合の計算方法についても一緒に紹介します。
計算例1 \( \sqrt{63} \times 90.2 \)
二乗根(ルート)を含む計算では、「二乗根(ルート)の計算」 の「\(A_1\) 尺・ \(A_2\) 尺の使い分けと位取り」で紹介したように、計算の最初に \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)と \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)のどちらを使うべきかを判断する必要があります。
判断方法は全く同じです。小数点から右または左に数字を2 桁ずつ区切ります。そして0 でない一番左側にある区切りの有効数字が1 桁の場合 \(A_1\) 尺、有効数字が2 桁の場合 \(A_2\) 尺を使います。
(1)二乗根を含む掛け算では、A 尺、D 尺、CI 尺(内尺法の場合)を使います。
(2)\( \sqrt{63} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_2\) 尺の「63」にカーソル線を合わせます。
(3)内尺法による掛け算の操作なので、90.2 → 9.02 としてCI 尺の「9.02」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)CI 尺の基線「10」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「7.16」を示します。
(5)位取りをします。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{63} \) は 1の位の数となることがわかります。これを概算で90.2 → 100 と掛けるので、答は100 から 1000 の範囲になると予想されます。
計算尺の計算結果は「7.16」だったので、この計算の答は「716」になります。
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計算例2 \( \sqrt{5.48} \times \sqrt{32.9} \)
・B 尺がある場合
B 尺を使って標線法の要領で計算をすることになります。
(1)使う目盛りはD 尺、A 尺、B 尺の3 種類です。
(2))\( \sqrt{5.48} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_1\) 尺の「5.48」にカーソル線を合わせます。
(3)標線法の要領で計算するのでB 尺の基線とカーソル線を合わせるように内尺を動かします。
ここで注意しないといけないのは、\( \sqrt{32.9} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(B_2\) 尺(B 尺の10 から 100までの範囲)の「32.9」を使うことがわかります。そのため、B 尺の「32.9」が目外れしないように、ここではB 尺の右基線「100」とカーソル線を合わせるように内尺を動かします。
(4)B 尺の「32.9」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「1.341」を示します。
(5)位取りをします。
概算で、5.48→ 10、32.9 → 30 とすると、\( 10 \times 30 = 300 \) となります。300 を「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で位取りすると、答は有効数字2 桁となることがわかります。
計算尺の計算による数値は「1.341」なので、この計算の答は「13.41」となります。
・B 尺がない場合
(1)標線法の要領で計算します。使う目盛りはD 尺、C 尺、A 尺の3 種類です。
(2))\( \sqrt{5.48} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_1\) 尺の「5.48」にカーソル線を合わせます。
(3)標線法の掛け算の要領で計算するので、C 尺の基線「1」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)\( \sqrt{32.9} \) を仮計算します。「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で\( \sqrt{32.9} \) は \(A_2\) 尺を使うことがわかりますので、A 尺の「32.9」にカーソル線を合わせます。するとD 尺に「5.74」を得ます。
(5)C 尺の「5.74」にカーソル線を合わせます。円形計算尺ではD 尺上に答の「1.343」を得ます。
一般的な計算尺では目外れしてしまいます。D 尺、C 尺、A 尺を同時に使う場合、CF 尺とDF 尺がそろっていない場合が多いと思います。このようなときは、基線の入れ替えを行います。A 尺の「5.48」とC 尺の右基線「10」が合うように内尺を動かし、その後C 尺の「5.74」にカーソル線を合わせることで、D 尺上に答の「1.343」を得ます。
(6)位取りをします。
概算で、5.48→ 10、32.9 → 30 とすると、\( 10 \times 30 = 300 \) となります。300 を「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で位取りすると、答は有効数字2 桁となることがわかります。
計算尺の計算による数値は「1.343」なので、この計算の答は「13.43」となります。
計算例3 \( \sqrt{125} \div 75 \)
(1)二乗根を含む割り算では、A 尺、D 尺、C 尺(内尺法の場合)を使います。
(2)\( \sqrt{125} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_1\) 尺の「1.25」にカーソル線を合わせます。
(3)内尺法による割り算の操作なので、C 尺の「7.5」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)C 尺の基線「10」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「1.491」を示します。
(5)位取りをします。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{125} \) は 10の位の数となることがわかります。これを概算で75 → 100 で割るので、答は0.1 から 1 の範囲になると予想されます。
計算尺の計算結果は「1.491」だったので、この計算の答は「0.1491」になります。
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計算例4 \( 532 \div \sqrt{0.784} \)
・B 尺がある場合
(1)使う目盛りはD 尺とB 尺です。
(2)D 尺の「5.32」にカーソル線を合わせます。
(3)\( \sqrt{0.784} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(B_2\) 尺(B 尺の10 から 100までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(B_2\) 尺の「78.4」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)B 尺の基線「100」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「6.01」を示します。
(5)位取りをします。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{0.784} \) は 0.1 の位の数となることがわかります。概算で532 → 500 とし、これを0.1 の位の数で割るので、答は500 から 5000 の範囲になると予想されます。
計算尺の計算結果は「6.01」だったので、この計算の答は「601」になります。
・B 尺がない場合
(1)使う目盛りはD 尺、C 尺、A 尺の3 種類です。
(2)まず\( \sqrt{0.784} \) を仮計算します。
\( \sqrt{0.784} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_2\) 尺の「78.4」にカーソル線を合わせます。
(3)カーソル線がD 尺上に「8.85」を示します。これをメモしておきましょう。
(4)532 → 5.32 としてD 尺の「5.32」にカーソル線を合わせます。
(5)C 尺の「8.85」((3)で得た数値 )とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(6)C 尺の基線「10」にカーソル線を合わせると、D 尺上に答の「6.01」が示されます。
(7)位取りをします。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{0.784} \) は 0.1 の位の数となることがわかります。概算で532 → 500 とし、これを0.1 の位の数で割るので、答は500 から 5000 の範囲になると予想されます。
計算尺の計算結果は「6.01」だったので、この計算の答は「601」になります。
計算例5 \( \sqrt{67.3} \div \sqrt{3.94} \)
・B 尺がある場合
(1)使う目盛りはD 尺、A 尺、B 尺の3 種類です。
(2))\( \sqrt{67.3} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_2\) 尺の「67.3」にカーソル線を合わせます。
(3)\( \sqrt{3.94} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(B_1\) 尺(B 尺の1 から 10までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(B_1\) 尺の「3.94」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)B 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「4.133」を示します。
(5)位取りをします。
はじめに概算で \(\sqrt{67.3} \div \sqrt{3.94} = \sqrt{ 67.3 \div 3.94 } \) と考え、 \( 67.3 \div 3.94 \) を概算します。67.3 → 70、3.94 → 4 として、 \( 70 \div 4 → 80 \div 4 = 20\) となります。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{20} \) は 1 の位の数となることがわかります。
計算尺の計算結果は「4.133」だったので、この計算の答は「4.133」になります。
・B 尺がない場合
(1)標線法の要領で計算します。使う目盛りはD 尺、CI 尺、A 尺の3 種類です。
(2)\( \sqrt{67.3} \) は「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)を使うことがわかります。そのため、 \(A_2\) 尺の「67.3」にカーソル線を合わせます。
(3)標線法の要領で計算するのでCI 尺の基線「1」とカーソル線を合わせるように内尺を動かします。
(4)\( \sqrt{3.94} \) を仮計算します。「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で\( \sqrt{3.94} \) は \(A_1\) 尺を使うことがわかりますので、A 尺の「3.94」にカーソル線を合わせます。するとD 尺に「1.984」を得ます。
(5)CI 尺の「1.984」にカーソル線を合わせると、D 尺上に答の「4.135」を得ます。
(6)位取りをします。
はじめに概算で \(\sqrt{67.3} \div \sqrt{3.94} = \sqrt{ 67.3 \div 3.94 } \) と考え、 \( 67.3 \div 3.94 \) を概算します。67.3 → 70、3.94 → 4 として、 \( 70 \div 4 → 80 \div 4 = 20\) となります。
「二乗根(ルート)の計算」 で紹介した方法で、\( \sqrt{20} \) は 1 の位の数となることがわかります。
計算尺の計算結果は「4.135」だったので、この計算の答は「4.135」になります。
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