二乗を含む掛け算・割り算 【計算尺の使い方12】


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「計算尺の使い方」まとめ

内尺の目盛りの交換について

計算尺の多くは、裏と表にそれぞれ目盛りが振られています。
計算の種類によっては、内尺の目盛りだけを裏表交換する必要がある場合があるので、それについて紹介いたします。

例えば、この後の計算例にある、D 尺、C 尺、A 尺の3 種類を計算で使いたい場合です。

計算尺の表面を見ると、次の写真のようにD 尺とC 尺はありますが、A 尺がありません。

一方でこの計算尺を裏返すと、次の写真のようにD 尺とA 尺はありますが、C 尺がありません。

このような時は、次のようにまず内尺を取り外します。

そして内尺だけを裏返して外尺に付け直すことができます。その結果、次の写真のようにD 尺、C 尺、A 尺の3 種類の目盛りがそろいます。

円形計算尺のように、内尺の交換ができない計算尺もあります。このような計算尺では、一度D 尺などで計算結果の答を出してその結果をメモし、計算尺を裏返して計算をし直すといったことが必要になります。

内尺にある「B 尺」について

二乗を含む割り算では、B 尺を使うと計算が容易になる場合があります。
B 尺の目盛りはA 尺と同じです。違いは、B 尺は内尺に目盛りが振られています。

計算尺によってはB 尺がないものもありますので、B 尺がない場合の計算方法についても一緒に紹介します。

計算例1 \( 8.2^2 \times 116 \)

二乗を含む掛け算・割り算では少し計算テクニックが必要です。掛け算・割り算は C 尺、CI 尺、D 尺を組み合わせて行いますが、「二乗の計算」で紹介したとおり、二乗の計算結果は A 尺上に出てしまうからです。A 尺とC 尺、CI 尺を組み合わせても、正しい掛け算・割り算はできません。

そこで、まずは式全体を二乗根にして、最後に結果を二乗するように変形します。
$$8.2^2 \times 116 = ( 8.2 \times \sqrt{116} )^2 $$

つまり、最初に \( 8.2 \times \sqrt{116} \) を計算してから最後にその計算結果を二乗します。さらに
$$ ( 8.2 \times \sqrt{116} )^2 = ( \sqrt{116} \times 8.2 )^2 $$

というように、二乗根を最初に持ってくるようにします。

(1)二乗を含む掛け算では、A 尺とCI 尺(内尺法の場合)を使います。

(2) \( \sqrt{116}  \) として、A 尺の「1.16」または「11.6」にカーソル線を合わせます。

二乗を含む掛け算・割り算の場合、A 尺に数値を置くときは\(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)と\(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)のどちらに置いても構いません。
上の画像の例では \(A_1\) 尺の「1.16」にカーソル線を合わせています。 \(A_2\) 尺の「11.6」にカーソル線を合わせても計算結果は同じです。

(3)内尺法による掛け算の操作なので、CI 尺の「8.2」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)CI 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がA 尺上に答の「78.0」を示します。

補足しますと、このときカーソル線はD 尺上に\( \sqrt{116} \times 8.2 \) の答を示しています。A 尺上の数値は \( \sqrt{116} \times 8.2 \)  の二乗となります。

(5)位取りをします。
概算で、8.2 → 10、116 → 100 とすると、\( 8.2^2 \times 116 → 10^2 \times 100 \)\( =10 000 \) となります。
計算尺の計算による数値は「78.0」→「7.80」(※注意)なので、この計算の答は10 000 の近くで 有効数字が「7.80」となる数字ということで「7 800」となります。

※注意
二乗を含む掛け算の場合、\(A_2\) 尺に答が出た場合も数値を 1 から 10 の間で読みます。
位取り(概算など)によって最終的な答の桁を決めるので、計算尺の計算で求めるのは有効数字部分の数値だけになります。

二乗を含まない掛け算・割り算では、最初にD 尺に数字を置き、最後にD 尺に答が出るようにするのが基本でした。
二乗を含む掛け算では、上の例のように、最初に二乗根(ルート)になる部分を計算し、最後に計算結果を二乗するので、最初にA 尺上に数字を置き、最後にA 尺に答が出るようにするのが基本となります。

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計算例2 \( 755 \div 3.45^2 \)

割り算の場合も、まずは式全体を二乗根にして、最後に結果を二乗するように式を変形します。
今回の計算例では次のように変形します。
$$755 \div 3.45^2 = ( \sqrt{755} \div 3.45 )^2 $$

ここで、式を変形したときに二乗根が最初に来るかどうかで計算の方法が変わります。
二乗根が後に来る場合はこの後の「計算例3」でやり方を紹介します。
この例では \( \sqrt{755} \div 3.45 \) と計算の最初に二乗根が来るので、このまま計算を続けます。

(1)二乗を含む割り算では、A 尺とC 尺(内尺法の場合)を使います。

(2) \( \sqrt{755}  \) として、A 尺の「7.55」または「75.5」にカーソル線を合わせます。

二乗を含む掛け算・割り算の場合、A 尺に数値を置くときは\(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)と\(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)のどちらに置いても構いません。
上の画像の例では \(A_2\) 尺の「75.5」にカーソル線を合わせています。 \(A_1\) 尺の「7.55」にカーソル線を合わせても計算結果は同じです。

(3)内尺法による割り算の操作なので、C 尺の「3.45」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)C 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がA 尺上に答の「6.34」を示します。

補足しますと、このときカーソル線はD 尺上に\( \sqrt{755} \div 3.45 \) の答を示しています。A 尺上の数値は \( \sqrt{755} \div 3.45 \)  の二乗となります。

(5)位取りをします。
概算で、755 → 800、3.45 → 3 とすると、\( 755 \div 3.45^2 → 800 \div 3^2 \)\( = 800 \div 9 → 800 \div 8 =100 \) となります。
計算尺の計算による数値は「6.34」なので、この計算の答は100 の近くで 有効数字が「6.34」となる数字ということで「63.4」となります。

計算例3 \( 256^2 \div 441 \)

計算例1、計算例2と同様、まずは式全体を二乗根にして、最後に結果を二乗するように式を変形します。
今回の計算例では次のように変形します。
$$256^2 \div 613 = ( 256 \div \sqrt{441} )^2 $$

この計算例では、式を変形したときに二乗根が後に来ます。割り算の場合、掛け算のように数値を入れ替えることができないので、計算例1、計算例2とは計算の仕方が異なります。

B 尺があれば計算が比較的楽ですが、ここではB 尺がない計算尺を使う場合の2 通りの計算方法を紹介します。

・B 尺がある場合

(1)使う目盛りはD 尺、A 尺、B 尺の3 種類です。

(2)\( ( 256 \div \sqrt{441} )^2 \) として計算します。まず 256 → 2.56 としてD 尺の「2.56」にカーソル線を合わせます。

(3)次に \(  \div \sqrt{441} \) の計算をします。 441 → 4.41 としてB 尺の「4.41」または「44.1」にカーソル線を合わせます。

B 尺に数値を置くときは\(B_1\) 尺(B 尺の1 から 10までの範囲)と\(B_2\) 尺(B 尺の10 から 100までの範囲)のどちらに置いても構いません。
上の画像の例では \(B_1\) 尺の「4.41」にカーソル線を合わせています。 \(B_2\) 尺の「44.1」にカーソル線を合わせても計算結果は同じです。

(4)B 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がA 尺上に答の「1.487」を示します。

補足しますと、このときカーソル線はD 尺上に\( 256 \div \sqrt{441} \) の答を示しています。A 尺上の数値は \( 256 \div \sqrt{441} \)  の二乗となります。

(5)位取りをします。
概算で、256 → 200、441 → 400 とすると、\( 256^2 \div 441 → 200^2 \div 400 \)\( = 40 000 \div 400  =100 \) となります。
計算尺の計算による数値は「1.487」なので、この計算の答は100 の近くで 有効数字が「1.487」となる数字ということで「148.7」となります。

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・B 尺がない場合

計算手順としては、最初に\( \sqrt{441} \) を計算し、普通の割り算の要領で計算をしてから最後に全体を二乗することになります。

\( 256^2 \) を最初に計算し、その結果をメモしてから \( \div 441 \) をしても良いのですが、\( ( 256 \div \sqrt{441} )^2 \) として計算した方が誤差の拡大が小さくなります。

(1)使う目盛りはD 尺、C 尺、A 尺の3 種類です。

(2)\( ( 256 \div \sqrt{441} )^2 \) として計算します。まず\( \sqrt{441} \) を計算するため、441 → 4.41 としてA 尺の「4.41」または「44.1」にカーソル線を合わせます。

\( \sqrt{441} \)  を計算するときは、「二乗根(ルート)の計算」で紹介したとおり\(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)にカーソル線を合わせなければなりませんが、今回のように計算の途中で二乗根を使い最後に全体を二乗する場合は、\(A_1\) 尺と\(A_2\) 尺のどちらを使っても問題ありません。ここでは試しに \(A_2\) 尺(A 尺の10 から100 までの範囲)の「44.1」にカーソル線を合わせ、B 尺がある場合の計算結果と合うかどうか見てみましょう。

(3)カーソル線がD 尺上に「6.64」を示します。これをメモしておきましょう。
( \(A_1\) 尺の「4.41」で計算する場合、「2.10」を得ます。 )

(4) 256 → 2.56 としてD 尺の「2.56」にカーソル線を合わせます。

(5)C 尺の「6.64」((3)で得た数値 )とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(6)C 尺の基線「10」にカーソル線を合わせると、A 尺上に答の「14.87」(1.487)が示されます。

(7)位取りをします。
概算で、256 → 200、441 → 400 とすると、\( 256^2 \div 441 → 200^2 \div 400 \)\( = 40 000 \div 400  =100 \) となります。
計算尺の計算による数値は「1.487」なので、この計算の答は100 の近くで 有効数字が「1.487」となる数字ということで「148.7」となります。

この計算を関数電卓で行うと、答は「148.607・・・」になります。
\( 256^2 \) を最初に計算し、その結果を \( \div 441 \) した場合、私の計算では「148.9」になりました。要求される計算精度によっては、\( 256^2 \)  を先に計算してから \( \div 441 \)  をする手順でも問題ないと思いますが、上記では計算精度が比較的良い方法として \( ( 256 \div \sqrt{441} )^2 \) での計算方法を紹介しました。

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当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

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