大英自然史博物館展で見た現代地質学の礎

東京・上野の国立科学博物館で6月11日(日)までに開催されている大英自然史博物館展。個人的に気になる展示がいくつもあったので、紹介してみようと思う。

英国の地質学の父、William Smith

地質学の教科書にも名前が載っている William Smith (1769-1839) 。博物館での展示によると、職業は測量技師だったらしい。足元の地面をつくる土や岩石などが、重なって連続する「層」であることを見出し、「地層」という概念を生み出した。
離れた地域の地層についても、その地層中に含まれる化石を比較し、同じ化石が産出する地層を同時代に作られたものと考えることで、広範囲での地層の追跡を可能とした。これによって、英国の地質図を作ることに成功したらしい。

当時の地質図

博物館内には当時作成された地質図の複製が展示されていた。地図の縮尺による精度(誤差)の違いはあれ、大局的には現在作成されている地質図と変わらないものであろう。
この地質図を拡大すると、現在の地質図には必ずといってよいほど掲載されている「地層の傾き(走向・傾斜)」の情報が記載されていないことに気づく。しかし一方で、地質断面図のようなものは同地質図中でも作成されている。
大局的な地質図だから細かい地質の傾きの情報を省いているのか、それとも地質の傾きの概念が出てくるのは後の鉱山開発の時代に発達するのか、そのあたりの歴史がどうなっているのか気になるところだ。

基本的に地質図の作り方は現在でも変わっていない。

William Smith の行った地質図作成の手法は、21世紀になった現在でも基本的には全く変わっていない。特に、離れた場所の地層の年代対比では、未だに化石による比較がなされている。海洋底のコア掘削で深さ1,000mを超える地層を調査するときも、その中に含まれる微生物の化石をもとに年代を推定しているのだ。

地質図作成の重要性

地質図の重要性は様々だろう。
わかりやすいのは、建物を建てるときの基礎をどうするか、ということだ。地盤がしっかりした場所であれば、地面の真上に平たい基礎を作りその上に家を建てればよいし(一番安い基礎)、液状化を起こすような軟弱な地盤であれば、地中深くまで杭を打つ必要がある。
そして現在の世界経済活動にも重要なのは、エネルギー開発での応用だろう。19世紀の英国であれば炭鉱、現在であれば油田の開発において、地質の情報、特に地層の連続性や変化の様子を知ることは必須だ。この概念がなければ、人類は効率的にエネルギーを確保することができず、現在の文明レベルを維持できないだろう。

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