上の画像にある、透明なビンの底にある白っぽい粉のようなものは、ネアンデルタール人のゲノムだということだ。
これも東京・上野の国立科学博物館で開催されている特別展、大英自然史博物館展の展示だ。このゲノムの展示は、展示の中でも一番最後に据えられている点が興味深い。
上の画像のように、堂々と「ネアンデルタール人のゲノム」と記載されている。
さて、ここで私は「絶滅した種のゲノムがどのように復元されるのだろうか?」と疑問に思った。まさか現代人(ホモ・サピエンス)のゲノムを多数分析した結果得られたものではなかろうし、かといって氷漬けのマンモス標本のように、ネアンデルタール人のゲノムがそのまま得られるようなサンプルがあったわけでもないだろう。
気になって仕方なかったので、帰宅してから調べたところ、以下のウェブサイトに詳しいことが書いてあった。
ネアンデルタール人のゲノムからわかったこと <JT生命誌研究館>
https://www.brh.co.jp/communication/shinka/2014/post_000016.html
私はタバコを吸わないが、JTもなかなか面白いことをしているものだと思った。
さて、興味のある方にはじっくり記事を読んでいただくとして、かいつまんで説明すると、ネアンデルタール人のゲノムは以下のように復元されたようだ。
- ネアンデルタール人の骨から、できる限りノイズを取り除いて、できる限りのゲノムを復元する。(これだけでも20年以上の研究者の努力があった。)
- 同時に、当時ヒトゲノムの解析も進められた。その他の動物のゲノムについても、順次解析が進められていった。
- ヒトゲノム、現生類人猿のゲノム配列を参考に、ネアンデルタール人のゲノムを並び替え、ネアンデルタール人のゲノムを復元した。
さらっと書いているが、これを実現するのに多くの研究者の汗と涙が積み重なっていることを考えると、感慨深い。
ところで、ネアンデルタール人について本気で調べるあたりが、ヨーロッパらしいと思った。日本人にもわずかながらネアンデルタール人のゲノムは混じっているようだが、先祖が直接対面していた(交雑していた)と思われるヨーロッパにおいては、その関心はより一層高いのだろう。
ちなみに、アフリカ人にはネアンデルタール人のゲノムは一切混じっていないらしい。アフリカから出た人類の祖先の足取りをつかむにも、大変興味深い内容だと思う。