2万年前の猪苗代湖(福島県)で、湖の底の地すべりによって津波が発生していたという研究結果のニュースを読んだ。
<猪苗代湖に2万年前に津波? 国内最大の湖底地滑り跡 産経新聞>
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170514-00000057-san-soci
そこで思い出したのが、『津波から生き残る』(土木学会 津波研究小委員会編,2009)の記述内容だ。
歴史上確認されている津波の最大到達高は525mで、1958年アラスカのリツヤ湾で発生している。
この津波は、地震によって崩落した岸壁が海に流入したことによる、土砂流入が原因で起きた。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災での衝撃的な映像がまだ記憶に鮮明に残っている私にとって、津波とは地震時の海底活断層のずれによって起きるものだというイメージが強かった。それはそれで間違いないだろうし、特にプレート境界型地震がもとで発生した津波は、その断層の動く範囲が広大で、すなわち津波の到達する範囲も広範囲に及ぶので、被害が大きくなるのは事実だ。
しかし忘れてはいけないのは、地震だけが津波の発生原因ではないということだ。
525mの津波を起こした土砂流入は、もとをたどれば地震が原因ではあるが、津波の発生原因はあくまで「土砂流入」なのだ。土砂流入が原因ということは、規模の大小はあれ、地震でなくても、たとえば大雨でも発生しうるのだ。
それを知っているからといって、人類にはどうしようもないことも多い気がする。今回紹介したニュースの例でも、では対策として猪苗代湖の湖岸に何十mもの堤防を築くべきかどうかといえば、そこまでする必要性があるか疑問である。
大切なのは、そういう事実が過去にあったということをできるだけ多くの人が知り、堤防のようなハードウェアに頼らず、非常時にひとりひとりが命を守る行動をとれるかどうか、という教育であると思った。