LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)【計算尺の使い方36】

scales of a slide rule/計算尺の目盛り


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「計算尺の使い方」まとめ

指数の計算で使うLL尺について

計算尺の指数計算では LL尺という目盛りを他の目盛りと組み合わせて使います。
LL 尺を使うと、指数の計算は掛け算や割り算と同じようにできます。
「位取り」が不要なので、目盛りをまたぐ場合に気を付ければ、掛け算や割り算の計算よりも簡単に感じる方も多いと思います。

LL尺にはいくつか種類があり、その種類は計算尺によってかなり異なります。
LL尺が無い計算尺もあります。LL尺が無くても指数の計算はできますが、手順がかなり複雑です。
指数の計算をする前に、ご自身が使用する計算尺の LL尺を確認しておく必要があります。

LL尺は外尺(固定尺)にあります。
上の写真の左側は、一般的な計算尺のヘンミ P253 のLL尺です。下側の外尺に「LL1」尺が、上側の外尺に「LL2」尺と「LL3」尺があります。
右側はコンサイスの円計算尺です。外尺に「LL2」尺と「LL3」尺がありますが、この計算尺には「LL1」尺はありません。

LL尺の関係について

※より詳しい解説を「LL尺の目盛りの選択」でしていますので、そちらもご参照ください。

LL3 尺は自然対数の底の \(e\approx 2.718\) から \(e^{10} \approx 22000\) までの目盛りです。
LL2 尺は \(e^{0.1}\) から \(e\)、 LL1 尺は \(e^{0.01}\) から \(e^{0.1}\) までの目盛りです。
LL1尺、LL2尺、LL3尺は目盛りとして連続しています。
下の図の関係を覚えておくと、目盛りをまたぐ計算で混乱が少なくなります。

お手持ちの計算尺の目盛り範囲については LL尺を使って計算ができます。
LL尺の目盛りの範囲外の指数計算は、LL尺がない場合の計算方法で代用します。

このページでは、以下最も基本的な a の b乗(\(a^b\) )の計算方法を紹介します。
計算では LL尺と、内尺の C尺を使います。
基本的には C尺を標線法の要領で、はじめに指数計算したい LL尺上の数値に C尺の基線を合わせることで計算します。

※ご注意ください。
以下の計算例ではすべて答が LL3尺の上に出ますが、指数の計算のすべての答が LL3尺の上に出るわけではありません。
LL1尺、LL2尺に答が出るような計算例は「LL尺の目盛りの選択」で紹介していますので、そちらもご参照ください。

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計算例1 3.2 の 4.7乗

(1)LL3尺の「3.2」にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の左基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)カーソル線を C尺の「4.7」に合わせます。カーソル線がLL3尺上に答の「237」を示します。

以上がLL尺を使った指数計算の基本となります。

計算例2 1.84 の 2.18乗

(1)LL2尺の「1.84」にカーソル線を合わせます。

(2)一般的な計算尺ではC尺の基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。(左基線を合わせると目外れしてしまいます。)

(3)カーソル線を C尺の「2.18」に合わせます。カーソル線がLL3尺上に答の「3.78」を示します。

この計算では目盛りをまたぐので、読むべき目盛りを間違えないように気を付けましょう。
一般的な計算尺では、左基線に合わせて目外れするときは数字が大きいLL尺の目盛りを、右基線に合わせて目外れするときは数字が小さいLL尺の目盛りを読みます。円形計算尺ではカーソルを回してカーソル線が目盛りをまたいだ時に、読むべきLL尺の目盛りの種類が変わります。
上の「LL尺の関係について」の図で述べた LL2尺と LL3尺との関係を押さえておくと間違えにくくなると思います。

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計算例3 1.28 の 13.3乗

(1)LL2尺の「1.28」にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の左基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)13.3 として、カーソル線を C尺の「1.33」に合わせます。カーソル線がLL3尺上に答の「26.7」を示します。

この計算でも、「LL尺の関係について」の図にある LL2尺、LL3尺と C尺との関係を押さえておくと間違えにくくなります。

計算例4 38.5 の 0.44 乗

(1)LL3尺の「38.5」にカーソル線を合わせます。

(2)一般的な計算尺ではC尺の基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)0.44 として、カーソル線を C尺の「4.4」に合わせます。カーソル線がLL3尺上に答の「4.98」を示します。

このページで紹介した方法では C尺を使った標線法による計算をしているので、各計算例の(2)の手順で最終的な答を出す時に目外れが起きないように、左右どちらの基線に合わせて内尺を動かせばよいかを考える必要があります。(円計算尺ではその必要はありません。)

最後にカーソル線が答を示す時、「LL尺の関係について」の図をイメージしながら読むべき LL尺の目盛りを正しく選ぶことで、間違えることなく計算できるようになります。
LL尺の選択については別ページ「LL尺の目盛りの選択」でより詳しく解説しています。

CI尺を使うと目外れは起きない

このページでは、C尺を使った標線法による要領で指数計算を行いました。
そのため、一般的な棒形の計算尺では目外れが起きてしまう場合があります。
C尺の左基線「1」で目外れする場合は、右基線「10」にカーソル線を合わせてカーソル線が示した答を読みます。

ところで、一般的な計算尺の場合、CI尺を使って内尺法による計算をすることで、目外れしない計算をすることもできます。
初めからC 尺とCI 尺を混ぜて説明してしまうと、次の記事で紹介する「LL尺を用いたaのb分の1乗の計算」と混同してしまうため、ここではC尺 を使った標線法による計算方法を紹介しました。
しかし、慣れてくればCI 尺を使って計算しても全く問題ありません。

内尺法による指数の計算については「LL尺を用いたaのb分の1乗の計算」も参考になると思いますので、よろしければご覧ください。(C尺を使った内尺法による計算です。)

おまけ~LL尺のバリエーション

日本では過去にヘンミ製の計算尺が多く使われていました。
ヘンミ製の計算尺の Ll尺は LL1尺から LL3尺までですが、海外製の計算尺では更に広範な LL尺を見ることができる場合もあります。
ドイツの Faber-castell 製の計算尺 2/83 N では、下の写真の下部のように LL0尺(\(e^{0.001}\) から \(e^{0.01}\) までの目盛り)があります。

さらに、上側の外尺には赤字で「LL 00」から「LL 03」までの尺があります。
これは逆数の LL尺で、例えば「LL 03」尺は \(e^{-1} = 1/e\) から \(e^{-10} = 1/e^{10} \) の範囲の目盛りとなります。
この尺を使うと aの -b乗の計算がとても楽になります。
とはいえ、この目盛りがある計算尺は世界的にも極めて少数だと思います。

(2021年2月28日更新)
(2021年3月2日一部追記修正)
(2021年3月9日一部追記修正)

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

4 thoughts on “LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)【計算尺の使い方36】

  1. Jochen

    計算尺の使い方36 指数の計算のところで一つ不明なところがありますのでご教授願えましたら幸いです。
    例えばaのb乗を計算するときaの値によりLL1 ,LL2 ,LL3 を使い分けることは分かるのですが結果を求めるときはいつでもLL3尺を参照すれば良いのでしょうか?
    お手すきの時で結構ですので解説して頂けると大変助かります。
    宜しく御願い致します。

  2. Yoshi-G 投稿作成者

    Jochen 様
    当サイト管理人のよしじでございます。
    この度はコメントをお寄せいただきまして、誠にありがとうございました。

    結論から申し上げますと、結果は必ずしもLL3尺に出るわけではありません。
    誤解を与える結果となり、大変申し訳ございませんでした。

    このページの「LL尺の関係について」の図をご覧いただきながら以下をお読みください。
    図の状態では、C尺の左基線「1」がLL尺の「1.105」に合わせられています。
    そのため、この図では1.105 の b 乗を計算することになります。

    例えばこの図で1.105 の2乗や5乗を求める場合、その答は「LL2」尺に表れます。
    図で C尺の「2」や「5」の目盛りに対応するのが「LL2」尺になるためです。
    もしも1.105 の20乗や50乗を求める場合、その答えは「LL3」尺に表れます。
    0.2乗や0.5乗では、答は「LL1」尺に示されます。

    今回コメントをいただくまで、4つの計算例の答がすべてLL3尺上に表示されることに全く気付きませんでした。
    現在(2021年2月時点)比較的安価で入手しやすいコンサイスの円形計算尺(当サイトでも紹介しているもの)には LL2 尺と LL3 尺しかありません。
    そのため、当サイトで計算尺に興味をお持ちいただいた方が実際に計算尺を操作するときに、できれば LL2 尺と LL3 尺だけで計算が完結するような計算例を考えておりました。
    さらに、LL1 尺と LL2 尺はその数値の範囲が 1.010 から 2.718 とかなり限られているので、計算しても面白みに欠けるなぁと思ってしまい、結果としてLL3 尺に答が出るような計算例ばかりを考えてしまいました。

    今回 Jochen 様にご指摘いただいたおかげで、私の解説が雑だったことに気づき大変助かりました。
    LL尺の目盛りの選択については、それひとつで項目を作ろうと思います。
    時間を作って2月中に記事を追加しようと思いますので、今後も当サイトをご覧いただけますと嬉しいです。
    引き続き当サイトをよろしくお願いいたします。

  3. Jochen

    Yoshi-G様、ご教授誠にありがとうございました。
    合点がいきました。
    自分でも幾つか例題を作って計算尺の答えと関数電卓の答えが合致しましたので教授していただいた自分の理解が正しいことを確認出来ました。
    これから先も楽しみにしています。
    faber castell 2/83n (先日e-Bayで入手)使用のJochenでした。

  4. Yoshi-G 投稿作成者

    Jochen 様
    ご返信いただき、ありがとうございます。
    本業がありウェブサイトの記事執筆も滞りがちなのですが、楽しみにしていただける方がいらっしゃるのは励みになります。
    計算尺の解説もあと少しでひと通り終わるので、今後も頑張ろうと思います。

    Faber Castell 2/83 N をお持ちなのですね!
    私も以前購入したのですが、ここでは語りつくせないくらい素晴らしい計算尺ですよね。
    LL尺に限って言えば、LL0 尺があるのと、マイナス乗計算用の赤のLL00~LL03尺があるのが感激です。

    当サイトで計算尺に関するコメントをいただいたのはJochen 様が初めてでした。
    Faber Castell 等外国製の計算尺をお持ちの方も多そうですね。
    今後はその点も意識して記事を執筆して参りたいと思います。

    引き続き、何かありましたらお気軽にご意見いただけますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

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