LL尺の目盛りの選択【計算尺の使い方37】


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「計算尺の使い方」まとめ

指数計算の「位取り」に当たるLL尺の目盛りの選択

LL尺にはLL1尺、LL2尺、LL3尺のように複数の目盛りがあります。
LL尺を用いた指数の計算では、どの目盛りに答が出るかを正しく選択する必要があります。
答が出るLL尺の目盛りの選択が、掛け算や割り算の計算の「位取り」に当たります。

実際の計算尺上でのLL尺の配置

「LL尺を用いたaのb乗の計算」の「LL尺の関係について」でとても簡単に紹介した LL1尺、LL2尺、LL3尺の関係の図をより詳しく見てみます。
ここではさらに LL0尺も加えました。


LL3 尺は自然対数の底の \(e\) から \(e^{10} \) までの目盛りです。
LL2 尺は \(e^{0.1}\) から \(e\)、 LL1 尺は \(e^{0.01}\) から \(e^{0.1}\) までの目盛りです。
種類は少ないですが、計算尺の中には \(e^{0.001}\) から \(e^{0.01}\) までの目盛り(LL0 尺)を持つものもあります。

LL尺の目盛りは外尺(固定尺)の上にあります。
これに対し、内尺(滑尺・可動)にある C尺などを組み合わせることで指数の計算をします。

LL0尺、LL1尺、LL2尺、LL3尺は目盛りとして連続しています。
しかし、実際の計算尺ではこの目盛りを全て横並びにはできません。
そのため、次の図のように目盛りを配置しています。


上の図の左に示す一般的な計算尺の場合、LL0尺、LL1尺、LL2尺、LL3尺はそれぞれ \(e^{0.01}\) 、 \(e^{0.1}\) 、 \(e\) で折り返して縦に並んでいます。
一方、図の右に示す円計算尺の場合、LL1尺、LL2尺、LL3尺は時計回りに渦を巻くように並んでいます。
この先では、横に連続した LL尺と実際の計算尺上の LL尺で計算結果がどのように表されるか具体的に見ていきましょう。

目盛りを追ってLL尺を選択する(例:1.5 の2乗と5乗)

LL尺を使って 1.5 の2乗と5乗をそれぞれ計算してみましょう。
1.5 の2乗は A尺 でも計算できますが、ここでは 1.5 の 5乗の計算との比較のため LL尺を使いましょう。

「LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)」の計算例1の要領で、LL2尺上にある1.5 に C尺の左基線「1」が合うように内尺を動かします。


この状態で、C尺の「2」にカーソル線を合わせ、対応する LL尺上の数値を読めば、1.5 の2乗の答が得られます。
この計算の場合、上の図に示したように、LL2尺上に答の「2.25」が示されます。

続けて、LL2尺にある1.5 に C尺の左基線が一致した状態でC尺の「5」にカーソル線を合わせます。この場合、対応する LL尺上の数値を読めば、1.5 の5乗の答が得られます。


このときは上の図に示したように、LL3尺上に答の「7.60」が示されます。
上の図では、LL2尺と LL3尺が連続していますが、実際の計算尺ではどのように答が示されるか次の図で見てみます。


初めに、分かりやすいので上の図の右側にある「円計算尺」の場合を見てみます。
円計算尺では、LL2尺と LL3尺は時計回りにつながっています。カーソル線をC尺の基線「1」から時計回りに回していくと、LL2尺と LL3尺の境界である自然対数の底「\(e\) 」にたどりつきます。ここから先は LL3尺の目盛りを追うようにし、カーソル線をC尺の5に合わせることで LL3尺上の答である「7.60」を読めばよいことがわかります。

一方で、上の図の左側に示す一般的な形の計算尺では、カーソル線をC尺の5に合わせようとすると目外れしてしまいます。


このような場合は「LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)」の計算例2に示したように、C尺の右基線「10」をLL2尺の 1.5 に合わせます。これによって、カーソル線を C尺の 5に合わせても目外れしません。
この時は、上の図の青い矢印で示したように目盛りを追うことで、正しい目盛りの選択ができます。
最初に LL2尺の 1.5 から右に目盛りを読み進め、LL2尺右端の \(e\) に達します。ここで LL3尺左端の \(e\) に移り、LL3尺の目盛りを C尺の 5に合うところで読み進めて、LL3尺上の「7.60」が答であることがわかります。

LL2尺の1.5 に C尺の左基線「1」ではなく、右基線「10」を合わせても正しい答が出るのか疑問に思う方もいるかもしれません。
そのような心配をされた方は下の図をご覧ください。


計算尺は、対数目盛(C尺、D尺など)の周期性を利用した計算機です。
上の図では、一番上の連続したLL尺の1.5(LL2尺上)に一番下の C尺の左基線「1」が合っています。このとき、C尺の右基線「10」は連続したLL尺の、LL3尺上の何らかの数値に合っていることになります。
しかし、計算尺の目盛りの周期性により、図の中央付近にある黄色い矢印で示したように、LL2尺を LL3尺の下に移すと LL2尺の 1.5 とC尺の右基線「10」が一致します。
そのため、指数を計算したい数字には C尺の左基線「1」と右基線「10」のどちらを合わせても指数の計算が問題なくできます。(逆にいえば、そうなるように LL尺の目盛りは振られています。
ただし、答を読むときに適切な目盛り(LL1尺、LL2尺、LL3尺のどれか)を選択する必要があるので、慣れないうちは C尺の目盛りを追うのに合わせて LL尺の目盛りを追いましょう。

円計算尺では、カーソル線をぐるぐる回して LL尺の目盛りを追うことで、比較的簡単に正しい LL尺の目盛りを選択できます。
一方で、一般的な(棒形の)計算尺では、目盛りを正しく追うのに慣れる必要があります。
以下の例では、一般的な計算尺について LL尺の目盛りの追い方を紹介します。

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10を超える乗数の計算(例:1.02 の15乗と250乗)

次に乗数が 10を超える場合を考えてみます。
はじめに、1.02 の 15乗の計算をしてみます。
「LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)」の計算例1の要領で、LL1尺の1.02 に C尺の左基線「1」が合うように内尺を動かします。


1.02の 15乗を計算するのであれば、上の図に示したように C尺の「15」にカーソル線を合わせれば、LL尺にその計算結果が示されるはずです。
ところが、C尺には目盛りが10までしかありません。

掛け算割り算の場合、15の有効数字の「1.5」にカーソル線を合わせて数値の計算をし、その後位取りで計算結果の桁数を求めていました。
LL尺を使った計算の場合も、15乗の計算をしたい場合は C尺の「1.5」にカーソル線を合わせます。これは、次の図で示すように、C尺の目盛りの周期性によって C尺の「1.5」と「15」が C尺上で同じ数値として機能するためです。


しかし、カーソル線を C尺の 1.5 に合わせたとき、1.02がある LL1尺の目盛りを答として読んでしまうと 1.02 の 1.5 乗を計算したことになっていまいます。
したがって、2つ上の図に示したように、15乗に対応する LL2尺の目盛りを読む必要があります。実際の計算尺では、1つ上の図の青い矢印に示したように目盛りを追いましょう。
LL2尺の目盛りを読むことで、正しい答の「1.3460」を得ます。

次に 1.02 の 250乗を計算してみましょう。
前の計算と同じく、LL1尺の1.02 に C尺の左基線「1」を合わせます。


1.02の 250乗は、上の図に示したように C尺の「250」にカーソル線を合わせ、LL尺に示される答を読むことになります。
しかし C尺には目盛りが10までしかありませんので、250の有効数字であるC尺の「2.5」にカーソル線を合わせます。


ここでは、2つ上の図に示したように、250乗に対応する LL3尺の目盛りを読む必要があります。
実際の計算尺では、1つ上の図の青い矢印で示したように、1.02 から LL尺の目盛りを追い、LL1尺の右端 \(e^{0.1}\) とLL2尺の右端 \(e\) で目盛りを折り返してカーソル線が示す数字を読み、LL3尺に 250乗の答が示されることがわかります。
この計算の答は「141.5」であることがわかります。

以上のように、一般的な計算尺の場合でも LL尺の連続性と C尺(対数目盛)の周期性を考えながら LL尺の目盛りを追うことで、正しい答が示される LL尺の計算ができるようになります。

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1未満の乗数の計算(例:4.8の0.2乗と0.06乗)

さらに乗数が 1未満の場合を考えてみます。
まずは 4.8 の 0.2乗を計算してみます。
「LL尺を用いたaのb乗の計算(a^b)」の計算例1の要領で、LL3尺の 4.8 に C尺の左基線「1」が合うように内尺を動かします。


4.8の 0.2乗は、上の図のように C尺の「0.2」にカーソル線を合わせ、LL尺の目盛りを読む必要があります。
しかし、C尺には 1未満の目盛りはありません。
そのため、有効数字であるC尺の「2」にカーソル線を合わせます。


1未満の乗数の場合、2つ上の図に示したように、4.8 から左にLL尺の目盛りを追って読む必要があります。
実際の計算尺では、1つ上の図の青い矢印に示したように目盛りを追いましょう。答が LL2尺上に表れることがわかります。
この計算の答は「1.3684」です。

さらに 4.8 の 0.06乗を計算してみましょう。
前の計算と同じ、LL3尺の 4.8 に C尺の左基線「1」を合わせます。


4.8の 0.06乗は、上の図に示したように C尺の「0.06」にカーソル線を合わせ、LL尺に示される答を読みます。
ただし C尺には1未満の目盛りはありませんので、0.06の有効数字であるC尺の「6」にカーソル線を合わせます。


この計算では、2つ上の図に示したように、0.06乗に対応する LL1尺の目盛りを読みます。
実際の計算尺では、1つ上の図の青い矢印のように、4.8 から LL尺の目盛りを追い、LL3尺の左端 \(e\) とLL2尺の左端 \(e^{0.1}\) で目盛りを折り返し、カーソル線まで目盛りを読み進めます。こうすると LL1尺上に 0.06乗の答が示されることがわかります。
この計算の答は「1.0987」です。

実は掛け算、割り算の場合も同じように目盛りを追うことで位取りができます。
しかし掛け算、割り算の場合は暗算によって位取りをした方が結果的に早く正しい桁数がわかります。
指数の計算も、LL尺の目盛りの振り方に慣れてくれば、わざわざ目盛りを追わなくても答が出る LL尺がすぐにわかるようになります。

三角関数の目盛りも連続している

このページでは LL尺(LL0尺から LL3尺)が連続していることを解説しました。
しかし実は三角関数の目盛り(sinの計算tanの計算角度6°以下の計算)も連続しています。

ST尺 → S尺
ST尺 → T1尺 → T2尺

以上の尺も連続しています。
三角関数の位取りの方法は「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介していますが、上の三角関数の目盛りの連続性を念頭に置いておくと位取りの方法を忘れた時も思い出しやすくなります。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

2 thoughts on “LL尺の目盛りの選択【計算尺の使い方37】

  1. Jochen

    再びお邪魔させて頂きます。
    Jochenです。
    老婆心ながらひょっとして誤記ではないかと思い書かせて頂きます。
    1未満の乗数の計算(例:4.8の0.2乗と0.06乗)の行から7行下の(しかし、C尺には 1未満の目盛りは10ありません。)の所の10は要らないのでは?
    また、更に9行下がって(4.8の 250乗は、上の図に示したように C尺の「0.06」にカーソル線を合わせ、LL尺に示される答を読みます。)250乗は0.06乗の間違いではないでしょうか?

    今回1未満の乗数の計算を学ばせて頂きました。
    計算尺の面白さの幅が益々広がってきました。
    感謝申し上げます。
    今回の投稿のついでのようで申し訳ない気持ちもあるのですがそれを興味が勝ってしまいましたので正直にリクエストさせて下さい。
    P尺つまりピタゴレリアン尺の使い方をご存知でしたらご教授願えますでしょうか。
    ネットで調べてみたのですが例が一つだけ提示されている記事を見つけましたが縦横に使いこなせるだけの理解を得るに至りませんでした。
    計算尺の使い方の最後の締めくくりの記事として考えていただけましたら幸甚です。

  2. Yoshi-G 投稿作成者

    Jochen 様

    当サイト管理人のよしじでございます。
    コメントの確認と返信が遅くなりまして、失礼いたしました。

    この度は誤記のご指摘をいただき、誠にありがとうございました。
    おかげさまでご指摘いただいた部分を修正できました。
    当サイトの記事の品質向上につながりますので、このようなご指摘は大変助かります。
    その他のページでも、誤記や疑問点などありましたらお気軽にコメントをお寄せください。

    また、P尺についてのリクエストをいただき、ありがとうございました。
    私も実際に使ったことはありませんが、ご期待に沿えるように準備いたしたいと思います。
    P尺は内尺の組み合わせでいくつかのパターンの関数計算ができたと記憶しておりますので、何本かに分けて記事を執筆いたしたいと思います。

    引き続き当サイトをよろしくお願いいたします。

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