掛け算と「位取り」について【計算尺の使い方4】


「計算尺の使い方」まとめ

計算尺で大切な「位取り」(くらいどり)について

計算尺の計算方法を知るために、最も簡単な掛け算の例として 2 × 3 = 6 の計算を紹介しました。
しかし実際にはもっと複雑な数値を扱う必要があります。

例えば \(32.8 \times 19.7 \) の計算をしてみましょう。

ここで掛け算をするときに使う「CI 尺」と「D 尺」または「C 尺」と「D 尺」の目盛りを見ると、どちらも10までしか目盛りがありません。
そのため、計算尺では次のように計算する数値を1 以上10 未満になおし数値の部分だけを計算します。

そして数値でない部分、つまり1 の位、10 の位、100 の位・・・の桁の数は人間が別に計算しなくてはなりません。これを「位取り」(くらいどり)といいます。
位取りは、計算尺の操作そのものよりも厄介かもしれません。少しずつ慣れていきましょう。

位取りのやり方

位取りの方法は計算の種類によって色々あるので随時紹介します。
ここでは掛け算で使う位取りの方法を2つ紹介します。

(1)概算による方法
32.8 を約30、19.7 を約20 として、30 × 20 を暗算します。答えは600 なので、計算尺の計算結果は600 前後だろうと予測をつけます。
計算尺で計算をしていた時代は、この概算による位取りの方法が最も一般的だったそうです。

注意点もいくつかあります。
数値の丸め方の判断に迷うこともあります。15 だったら約10 とすべきか、約20 とすべきか、などです。この場合は思い切ってどちらかで暗算するしかありませんが、例えば暗算で 600 くらいかな?と思っていたら実際の計算値は 1 000 以上だったりする場合もあり、混乱してしまうこともあります。
暗算して600 だった場合、実際の計算値はその半分から2倍、つまり300 から1 200 の間になったりします。さらに、3つ以上の数を掛けたり割ったりすれば、そのずれも大きくなってしまいます。

概算法は本当におおざっぱな桁を決めるもの(約60 なのか?約600 なのか?約6 000 なのか?)だと認識しておきましょう。
そして何より、色々な計算を実際にして慣れましょう。

(2)10 の指数を計算する方法
掛けたり割ったりする数値それぞれの10 の指数部分を別に計算しておく方法です。
このページの最初に紹介した、計算尺での掛け算のやり方に則った方法になります。そのような意味では厳密な計算の仕方になるので、3つ以上の数を掛けたり割ったりするときもズレることはありません。
ただし、数値同士の掛け算の結果が10 を超えるような場合もあります。このような時は、 \(12.3 \times 10^2\)  →  \(1.23 \times 10^3\) のように10 の指数をひとつ上げ下げしなくてはならないので、注意が必要です。

指数の計算に慣れている方なら、この方法で暗算するのも良いと思います。
指数の計算が面倒、難しいという方は(1)の概算による方法でも全く問題ありません。

位取りも含めた実際の掛け算の計算

それでは位取りも含めて、\(32.8 \times 19.7 \) を計算尺で計算してみましょう。
ここでは外尺の「D 尺」と内尺の「CI 尺」を使った方法(内尺法)で計算してみます。

(1)使う目盛りは外尺の「D 尺」と内尺の「CI 尺」です。

(2)D 尺の「3.28」にカーソル線を合わせます。

(3)CI 尺の「1.97」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)CI 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「6.46」を示します。
カーソル線が目盛りと目盛りの間にある場合、目分量で数値を読みます。

(5)最後に位取りをします。
概算で \(30 \times 20 = 600 \) なので、答は600 前後になります。
計算尺による数値の計算結果は「6.46」だったので、答は「646」 になります。

計算例2 0.084 × 0.55

(1)使う目盛りは外尺の「D 尺」と内尺の「CI 尺」です。

(2)D 尺の「8.4」にカーソル線を合わせます。

(3)CI 尺の「5.5」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)CI 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「4.62」を示します。

(5)位取りをします。
概算で位取りをする場合、0.084 → 0.1、0.55 → 0.5 として \(0.1 \times 0.5 = 0.05 \) となります。
計算尺上の数値の答は「4.62」だったので、この計算の答は「0.0462」となります。

10の指数を使って位取りをする場合、 \(0.084 → 8.4 \times 10^{-2} \)、 \(0.55 → 5.5 \times 10^{-1} \) なので、 \(8.4 \times 5.5 \times 10^{-2-1}  = 8.4 \times 5.5 \times 10^{-3} \) となります。ここで \(8 \times 5\ = 40 \) なので、数値同士の掛け算の結果も10よりも大きくなることから、最終的な計算結果の桁は \(10^{-3} \times 10 = 10^{-2} \) となることがわかります。
計算尺上の数値の答は「4.62」だったので、この計算の答は「 \(4.62 \times10^{-2} = 0.0462\) 」となります。

計算例3 1234 × 0.0377

(1)使う目盛りは外尺の「D 尺」と内尺の「CI 尺」です。

(2)D 尺の「1.234」にカーソル線を合わせます。
最後の桁の「4」は目盛りと目盛りの間を目分量で合わせます。

(3)CI 尺の「3.77」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)CI 尺の基線「1」にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「4.655」を示します。
ただし、「4.655」の最後の桁「5」は目分量で不確かさを含みます。カーソル線は「4.66」より少し小さいくらいの部分を指すと思います。

(5)位取りをします。
概算で位取りをする場合、1 234 → 1 000、0.0377 → 0.05 として \(1000 \times 0.05 = 50 \) となります。
計算尺上の数値の答は「4.655」だったので、この計算の答は「46.55」となります。

10の指数を使って位取りをする場合、 \(1234 → 1.234 \times 10^{3} \)、 \(0.0377 → 3.77 \times 10^{-2} \) なので、 \(1.234 \times 3.77 \times 10^{3-2}  = 1.234 \times 3.77 \times 10^{1} \) となります。したがって、最終的な計算結果の桁は \(10^{1} \) となります。
計算尺上の数値の答は「4.655」だったので、この計算の答は「 \(4.655 \times10^{1} = 46.55\) 」となります。

必要に応じて答えを読み取る桁数を考える

上記の「計算例3」のように、計算尺で実際に計算をしてみると、目盛りと目盛りの間にカーソル線を目分量で合わせたり、逆にカーソル線で目盛りと目盛りの間の数値を目分量で読み取ったりする場合があります。
こればかりは、目分量でできるだけ正確に合わせる・読み取るしかありません。
計算結果を読み取る場合は、その時の必要に応じて読み取る桁を考えましょう。「計算例3」の場合、実際に必要な数値が有効数字3 桁までだったら「46.6」を答えとしてしまっても構いません。

計算尺は、電卓のように有効数字5 桁、6 桁まで数値を計算できるわけではありません。その点は電卓と比べると計算尺の弱みになるかもしれません。
一方で、実用上、つまり実際に何かを作ったりするのに数値計算をする場合、有効数字4 桁、5 桁までは必要ないということも多いのではないでしょうか。電卓では有効数字8 桁とか12 桁とかまでが簡単に計算できますが、会計計算でもなければ細かい数値は必要ないことが実際には多いと思います。
(会計計算は計算尺よりもそろばんの方が圧倒的に向いています。しかもそろばんは電卓より桁数が多いです。)

「計算尺の目盛りと基本操作」の最後の方に書いた「相対誤差」も含めて、計算尺の特性を知った上でうまく計算尺を使いこなしましょう。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

コメントを送る / Send your comment

メールアドレスが公開されることはありません。 / Your e-mail address will be kept private.

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください