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積・分数を含む常用対数
常用対数には次のような性質があります。
\( \log_{a}{bc} = \log_{a}{b} + \log_{a}{c} \)
\( \log_{a}{\frac{b}{c}} = \log_{a}{b} – \log_{a}{c} \)
計算尺は足し算引き算ができないので、上の2式については左辺の形のままで計算をすることになります。やること自体はとても単純で、最初にC 尺、CI 尺、D 尺で \( b \times c \) または\( b \div c \) を計算し、その結果をL 尺で常用対数に変換します。
L尺が内尺にある場合、最後に外尺と内尺の基線をそろえる必要があります。掛け算の場合は直接計算する方法もありますが、通常の掛け算の方法とは手順が異なってしまい混乱するので、このページでは最後に内尺と外尺の基線をそろえて対数を求める方法を紹介します。
以下の計算例では、一般的な計算尺ではL尺が外尺に、円形計算尺ではL尺が内尺にある前提で計算します。
2乗根、3乗根の常用対数
常用対数には次のような性質もあります。
\( \log_{a}{b}^c = c \log_{a}{b} \)
この式は指数部分の\(c\) がどのような値でも計算できるのでとても便利です。計算尺でも\(c\) が任意の値で常用対数を求めた後に\(c\) を掛けて計算します。
\(c\) が1/2、1/3 の場合、つまり2乗根、3乗根の場合、計算尺ではA 尺またはK 尺を使って計算をすることもできます。このページでは、その方法を紹介します。
以下の計算例では、一般的な計算尺ではA尺・K尺とL尺が裏表にある前提で計算します。円形計算尺ではA尺・K尺とL尺が同じ面にあるとしています。
計算例1 \( \log_{10}{(4.15 \times 78.3)} \)
(1)はじめにD 尺の「4.15」にカーソル線を合わせます。
(2)78.3 → \(7.83 \times 10\) として、CI 尺の「7.83」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(3)CI 尺の基線にカーソル線を合わせます。ここまでは内尺法による掛け算の計算と一緒です。
円形計算尺(内尺にL 尺がある計算尺)の場合、その次に外尺の基線と内尺の基線とを合わせるように内尺を操作します(図の②)。カーソル線が示すL 尺の目盛りを読み取ることで、答の小数点部分となる「0.512」を得ます。
(4)整数部分を計算します。
概算で \( 4.15 \times 78.3 \) → \( 4 \times 80 = 320 \) なので、\( \log_{10}{320}\)\(= \log_{10}{3.2} + \log_{10}{10^2}\) となります。\( \log_{10}{10^2} = 2 \) なので、答の整数部分は2 となることがわかります。(3)の計算結果(概算の\( \log_{10}{3.2} \) の部分)と合わせて、答は「2.512」です。
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計算例2 \( \log_{10}{\frac{5.81}{113}} \)
(1)はじめにD 尺の「5.81」にカーソル線を合わせます。
(2)113 → \(1.13 \times 10^2\) として、C 尺の「1.13」とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(3)C 尺の基線にカーソル線を合わせます。ここまでは内尺法による割り算の計算と一緒です。
円形計算尺(内尺にL 尺がある計算尺)の場合、その次に外尺の基線と内尺の基線とを合わせるように内尺を操作します(図の②)。カーソル線が示すL 尺の目盛りを読み取ることで、答の小数点部分として「0.711」を得ます。
(4)整数部分を計算します。
概算で \( 5.81 \div 113 \) → \( 5 \div 100 = 0.05 \) なので、概算で \( \log_{10}{0.05}\)\(= \log_{10}{5} + \log_{10}{10^{-2}}\) となります。\( \log_{10}{10^{-2}} = -2 \) なので、(3)の結果計算結果(概算の\( \log_{10}{5} \) の部分)と合わせて\(\log_{10}{5} + \log_{10}{10^{-2}}\)\( = 0.711 – 2 = -1.289\) となります。よって、答は「-1.289」です。
計算例3 \( \log_{10}{\sqrt{387}} \)
2乗根、3乗根の計算では「二乗根(ルート)の計算」や「三乗根の計算」も参照してください。
(1)ルートの中身が「387」なので、「\(A_1\) 尺・ \(A_2\) 尺の使い分けと位取り」にしたがって\(A_1\) 尺の「3.87」にカーソル線を合わせます。
一般的な計算尺の場合、D尺に「1.967」を得ます。
(2)一般的な計算尺の場合、計算尺を裏返しにして L尺のある面にします。D尺上で、(1)で得た「1.967」にカーソル線に合わせると、カーソル線がL 尺に答の小数点部分である「0.2936」を示します。
円形計算尺の場合、内尺と外尺の基線を予め合わせておけば、そのままL 尺を読み答の小数点部分である「0.2936」を得ます。
(3)整数部分を計算します。
「\(A_1\) 尺・ \(A_2\) 尺の使い分けと位取り」より、\( \sqrt{387} \) は 2桁の数となることがわかります。したがって、この計算の答は \( \log_{10}{x \times 10} = \log_{10}{x} + \log_{10}{10}\)\(= \log_{10}{x} + 1\) となり、答の整数部分は「1」となることがわかります。(2)の計算結果と合わせて、答は「1.2936」です。
ややこしければ別々に計算する
以上のように積・分数・2乗根(ルート)・3乗根を含む常用対数の計算ができますが、計算尺によってL 尺のある場所が異なるため計算の方法も計算尺によって異なります。
ややこしければ、対数の中身を別に計算してから常用対数を計算する、つまり別々に計算した方がよいです。
また、2乗、3乗の場合は2乗、3乗の計算をして数値を求めてからその数値の常用対数を計算します。つまり、個別に計算することになります。そのため、
\( \log_{10}{b}^2 = 2 \log_{10}{b} \)
\( \log_{10}{b}^3 = 3 \log_{10}{b} \)
として、2倍・3倍で計算しても手間は変わりません。
やりやすい、間違えにくい方法で計算するように心がけましょう。
(2021年4月24日 更新)
計算尺に関する記事一覧
当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。
五月蠅のJochenです。
例題1の答えは48.39ではないでしょうか?
電卓で計算しました。
Jochen 様
当サイト管理人のよしじでございます。
この度もご指摘いただきまして、ありがとうございました。
コメントをいただくまで、常用対数の中にあるべき括弧が無かったことに気づきませんでした。
この記事の例題1で示したかったのは log(4.15 × 78.3)でした。
この計算の答は2.512(関数電卓では 2.5118…)です。
おかげさまで式の誤りに気付くことができました。
コメントいただき、誠にありがとうございました。