1未満の指数の計算【計算尺の使い方42】


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「計算尺の使い方」まとめ

1未満の指数の計算は LL 尺ではできない

LL 尺がある計算尺をお持ちの方はお気づきかもしれませんが、LL 尺には 1を超える目盛りしか存在しません。
「LL尺の目盛りの選択」で示した図を下に再掲しますが、LL0尺でさえもその範囲は 1.001以上(正確には\( e^{0.001} \))です。

そのため、LL 尺を使わない指数計算の方法で計算を行います。
LL尺がない場合の指数の計算方法の基本は「LL尺が無い場合の aの b乗の計算」で紹介しています。
計算したい数値を常用対数で変換し、その後 10の指数の計算をするという流れになります。

また、LL0x尺(赤の目盛り)がある計算尺をお持ちの場合は、LL0x尺を使って LL尺と同様の手順で 1未満の指数計算ができます。
LL0x尺の目盛りについていは「aの -b乗の計算」で解説していますが、LL0x 尺は 0よりも大きく 1未満の数値に対する目盛りとなっています。
LL0x尺を用いた方が、素早くかつ正確な計算ができます。

それでは実際の計算方法を、LL0x尺がない場合とある場合それぞれについて見ていきましょう。

計算例1 0.738の 1.29乗

方法1 LL0x尺がない場合

\(0.738^{1.29}\) の常用対数を \( \log_{10}{0.738^{1.29}} = 1.29 \log_{10}0.738 \) と変形して計算します。
次に10の \( \log_{10}{0.738^{1.29}} \) 乗を計算することで答を得ます。

(1)\( \log_{10}{0.738^{1.29}} = 1.29 \log_{10}0.738 \) を計算するために、\( \log_{10}0.738 \) を計算します。
0.738として、D尺(円形計算尺では C尺)の「7.38」にカーソル線を合わせて、そのまま L尺を見ると \( \log_{10}7.38 \) の答の小数点部分「0.8679」を得ます。
\( \log_{10}{0.738} = \log_{10}{0.1 \times 7.38} \)\( = -1 + \log_{10}{7.38} \) なので、\( \log_{10}0.738 \) は \(-1 + 0.8679 = -0.1321\) だとわかります。

(2)1.29に(1)で得た答を掛けます。
D尺の「1.29」にカーソル線を合わせ(図の①)、0.1321 として CI尺の「1.321」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(3)CI尺の右基線「1」にカーソル線を合わせると、D尺上に答の「1.704」が出ます。
概算で位取りをすると、\(1.29 \times -0.1321 \rightarrow 1 \times -0.1 \)\( = -0.1\) なので、\( \log_{10}{0.738^{1.29}} \) は「-0.1704」であることがわかります。

(4)10の -0.1704乗を計算します。
計算したい数を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分けます。
-0.1704 の場合、\( -0.1704 = -1 + 0.8296 \) となるので、計算尺では 0.8296 の部分を計算します。
L尺の「0.8296」にカーソル線を合わせてそのまま D尺(円計算尺では C尺)の目盛りを読むと「6.75」を得ます。

(5)位取りをします。
(4)より \(10^{0.8296}=6.75\) だとわかりました。よって、
\(10^{-0.1704} = 10^{-1+0.8296}\)\(= 10^{-1}\times 10^{0.8296}\)\(= 0.1 \times 6.75 = 0.675\) です。
よって、この計算の答として「0.675」を得ます。

※この計算の実際の答は\(0.6757\cdots\) です。

方法2 LL0x尺がある場合

(1)LL02尺の「0.738」にカーソル線を合わせ(図の①)、C尺の左基線「1」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(2)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「1.29」にカーソル線を合わせると、答が LL02尺上に出ることがわかります。

(3)LL02尺上に答の「0.6758」が示されます。

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計算例2 0.269の 0.328乗

方法1 LL0x尺がない場合

\(0.269^{0.328}\) の常用対数を \( \log_{10}{0.269^{0.328}} = 0.328 \log_{10}0.269 \) と変形して計算します。
次に10の \( \log_{10}{0.0.269^{0.328}} \) 乗を計算することで答を得ます。

(1)\( \log_{10}{0.269^{0.328}} = 0.328 \log_{10}0.269 \) を計算するために、\( \log_{10}0.269 \) を計算します。
0.269として、D尺(円形計算尺では C尺)の「2.69」にカーソル線を合わせて、そのまま L尺を見ると \( \log_{10}2.69 \) の答の小数点部分「0.4298」が求められます。
\( \log_{10}{0.269} = \log_{10}{0.1 \times 2.69} \)\( = -1 + \log_{10}{2.69} \) なので、\( \log_{10}0.269 \) は \(-1 + 0.4298 = -0.5702\) だとわかります。

(2)0.328に(1)で得た答を掛けます。
0.328 としてD尺の「3.28」にカーソル線を合わせ(図の①)、0.5702 としてCI尺の「5.702」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(3)CI尺の左基線「10」にカーソル線を合わせると、D尺上に答として「1.869」が示されます。
概算で位取りをすると、\(0.328 \times -0.5702 \rightarrow 0.3 \times -0.5 \)\( = -0.15\) なので、\( \log_{10}{0.269^{0.328}} \) は「-0.1869」であることがわかります。

(4)10の -0.1869乗を計算します。
計算したい数を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分けます。
-0.1869 の場合、\( -0.1869 = -1 + 0.8131 \) となるので、計算尺では 0.8131 の部分を計算します。
L尺の「0.8131」にカーソル線を合わせてそのまま D尺(円計算尺では C尺)の目盛りを読むと「6.50」を得ます。

(5)位取りをします。
(4)より \(10^{0.8131}=6.50\) だとわかりました。よって、
\(10^{-0.1869} = 10^{-1+0.8131}\)\(= 10^{-1}\times 10^{0.8131}\)\(= 0.1 \times 6.50 = 0.650\) です。
よって答は「0.650」となります。

※この計算の実際の答は\(0.65006\cdots\) です。

方法2 LL0x尺がある場合

(1)LL03尺の「0.269」にカーソル線を合わせ(図の①)、C尺の左基線「1」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(2)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「0.328」にカーソル線を合わせると、答が LL02尺上に出ることがわかります。

(3)LL02尺上に答の「0.650」が示されます。

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