3/2乗・2/3乗の計算 【計算尺の使い方20】


「計算尺の使い方」まとめ

D 尺、A 尺、K 尺の関係

二乗の計算二乗根の計算でも説明していますが、A 尺はD 尺と同じ幅に2 つの対数目盛を横に並べ、1 から 100 までの対数目盛を振った目盛りになります。
同様に、三乗の計算三乗根の計算でも説明していますが、K 尺はD 尺と同じ幅に3 つの対数目盛を横に並べ、1 から 1000 までの対数目盛を振った目盛りになります。

二乗・二乗根の計算ではD 尺とA 尺とを組み合わせることで計算をしました。また、三乗・三乗根の計算ではD 尺とK 尺とを組み合わせることで計算をしました。

ここでは、A 尺とK 尺を組み合わせることで2分の3乗、3分の2乗の計算方法を紹介します。

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2分の3乗の計算方法

A 尺は2 つの対数目盛を並べた対数目盛になります。また、K 尺は3つの対数目盛を並べた対数目盛になります。
そのため、A 尺の目盛りに対してK 尺の目盛りは2分の3乗の関係にあります。この関係を利用して計算します。

位取りの方法

数値が簡単な場合は、二乗根の中の数値を概算で三乗して、その結果を「二乗根(ルート)の計算」で紹介した方法で位取りします。

また、少し複雑に思われるかもしれませんが、2分の3乗の計算では次のような位取りの計算方法もあります。

(1)まず2分の3乗を計算したい数について、「二乗根(ルート)の計算」で紹介した使い分けの方法で \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)と \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)のどちらを使うか判断します。

(2)計算したい数を10 の指数表記にして桁が10 の nだったとき、つまり数を \(M \times 10^n \) と表記したとき・・・

① \(A_1\) 尺を使って答が \(K_1\) 尺に出た場合、答の10 の指数は \( \large n \times \frac{3}{2}\)
② \(A_1\) 尺を使って答が \(K_2\) 尺に出た場合、答の10 の指数は \( \large n \times \frac{3}{2} + 1\)
③ \(A_2\) 尺を使って答が \(K_2\) 尺に出た場合、答の10 の指数は \( \large n \times \frac{3}{2}  –  \frac{1}{2}\)
④ \(A_2\) 尺を使って答が \(K_3\) 尺に出た場合、答の10 の指数は \( \large n \times \frac{3}{2} + \frac{1}{2}\)

計算例1 \( \sqrt{ 322^3 }\)

(1)最初に  \(A_1\) 尺と \(A_2\) 尺のどちらを使うべきかを判断します。
「二乗根(ルート)の計算」で紹介した方法によって、322 の場合は \(A_1\) 尺(A 尺の1 から 10までの範囲)を使います。

(2)\( 322 = 3.22 \times 10^2\) として、\(A_1\) 尺の「3.22」にカーソル線を合わせます。

(3)そのままK 尺を見ます。カーソル線が\(K_1\) 尺上(K 尺の1 から 10までの範囲)に答の「5.78」を示します。

(4)位取りをします。
この計算では、\(A_1\) 尺を使って答が \(K_1\) 尺上に出たので、上で紹介した方法の ① を使って位取りをします。
元の数の10 の指数が \( 322 = 3.22 \times 10^2\) より 2 なので、計算結果の10 の指数は
$$ 2 \times \frac{3}{2} = 3 $$
となります。計算尺で得た数値は(3)より「5.78」だったので、この計算の答は\( 5.78 \times 10^3 = 5780\) となります。

計算例2 \( \sqrt{ 0.477^3 }\)

(1)最初に  \(A_1\) 尺と \(A_2\) 尺のどちらを使うべきかを判断します。
「二乗根(ルート)の計算」で紹介した方法によって、0.477 の場合は \(A_2\) 尺(A 尺の10 から 100までの範囲)を使います。

(2)\(A_2\) 尺の「47.7」にカーソル線を合わせます。

(3)そのままK 尺を見ます。カーソル線が\(K_3\) 尺上(K 尺の100 から 1000までの範囲)に答の「329」を示します。

(4)位取りをします。
この計算では、\(A_2\) 尺を使って答が \(K_3\) 尺上に出たので、上で紹介した方法の ④ を使って位取りをします。
元の数の10 の指数が \( 0.477 = 4.77 \times 10^{-1}\) より -1 なので、計算結果の10 の指数は
$$ -1 \times \frac{3}{2} + \frac{1}{2} = -1 $$
となります。計算尺で得た数値は(3)より「329」だったので、この計算の答は\( 3.29 \times 10^{-1} = 0.329\) となります。

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3分の2乗の計算方法

A 尺の目盛りとK 尺の目盛りを 2分の3乗の場合と逆に考えます。
K 尺の目盛りに対してA 尺の目盛りは3分の2乗の関係にあります。この関係を利用して計算することになります。

位取りの方法

三乗根の中の数値を概算で二乗して、その結果を「三乗根の計算」で紹介した方法で位取りします。

計算例3 \( \sqrt[3]{ 7100^2 }\)

(1)最初に  \(K_1\) 尺、\(K_2\) 尺、\(K_3\) 尺のどの目盛りを使うべきかを判断します。
「三乗根の計算」で紹介した方法によって、7100 の場合は \(K_1\) 尺(K 尺の1 から 10までの範囲)を使います。

(2)\( 7100 → 7.10 \times 10^3\) として、\(K_1\) 尺の「7.10」にカーソル線を合わせます。

(3)そのままA 尺を見ます。カーソル線が\(A_1\) 尺上(A 尺の1 から 10までの範囲)に答の「3.69」を示します。

(4)位取りをします。
\( 7100 → 7 \times 10^3\) としてこの数値を二乗すると、\( (7 \times 10^3)^2 = 7^2 \times 10^{3 \times 2}\) \(= 49 \times 10^6 = 4.9 \times 10^7\) となります。これを「三乗根の計算」で紹介した方法で位取りすると、答は100 の位の数になることがわかります。計算尺で得た数値は(3)より「3.69」だったので、この計算の答は 369 となります。

計算例4 \( \sqrt[3]{ 0.016^2 }\)

(1)最初に  \(K_1\) 尺、\(K_2\) 尺、\(K_3\) 尺のどの目盛りを使うべきかを判断します。
「三乗根の計算」で紹介した方法によって、0.016 の場合は \(K_2\) 尺(K 尺の10 から 100までの範囲)を使います。

(2)\(K_2\) 尺の「16」にカーソル線を合わせます。

(3)そのままA 尺を見ます。カーソル線が\(A_1\) 尺上(A 尺の1 から 10までの範囲)に答の「6.34」を示します。

(4)位取りをします。
\( 0.016 → 2 \times 10^{-2}\) としてこの数値を二乗すると、\( (2 \times 10^{-2})^2 = 2^2 \times 10^{-2 \times 2}\) \(= 4 \times 10^{-4} \) となります。これを「三乗根の計算」で紹介した方法で位取りすると、答の数値は小数点以下第 2 位から始まることがわかります。計算尺で得た数値は(3)より「6.34」だったので、この計算の答は 0.0634 となります。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

2 thoughts on “3/2乗・2/3乗の計算 【計算尺の使い方20】

  1. Jochen

    毎度の5月蝿Jochenです。
    今回の計算手順はとても簡単ですね。
    でもハエの脳みそではこの計算ロジックが始めピンと来ませんでした。
    そこで以下の関係図を提案させて下さい。
    これなら何故本文の計算手順で答えが出るのか分かりやすいと思います。
    このページトップの点線の四角をαに置き換えています。

         2分の3乗の計算    3分の2乗の計算 
    K尺ーーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーーーー
         ③ (ルートα)の3乗   ① α

    A尺ーーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーーーー
         ① α          ③ 3乗根αの2乗

    D尺ーーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーーーー
         ② ルートα       ② 3乗根α

    この回の計算手順においてはD尺が伏せられていると思えば良いんですね!
    今回も老婆心済みませんでした。

  2. Yoshi-G 投稿作成者

    Jochen 様
    当サイト管理人のよしじでございます。
    この度はコメントの返信にいつも以上に時間を要してしまい、大変失礼いたしました。

    3/2乗、2/3乗の計算の方法について、関係図のご提案をありがとうございました!
    私は作文が元々苦手なので、確かに言葉で説明するよりは図示した方がよいですね。
    この度いただいたご提案は、まとまった時間が取れたときに実現したいと思います。

    また、以前ご提案いただいた P尺の記事の執筆について、本日ようやく実現いたしました。
    内容が長いので2部構成といたしました。
    続きは遅くても今年(2021年)6月までに執筆・公開したいと思います。
    P尺については詳しい解説をしている日本語のウェブサイトも少ないので、今後 Jochen様をはじめ皆様のお役に立てれば幸いです。
    ぜひご覧いただき、お気づきの点があればお気軽にコメントをいただければと思います。

    引き続き当サイトをよろしくお願いいたします。

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