三角関数を含む掛け算【計算尺の使い方28】


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「計算尺の使い方」まとめ

使用する目盛りについて

掛け算の計算方法自体は「掛け算のやり方 ~2種類の計算方法~」に記載したとおりで、「内尺法」と「標線法」の2種類があります。
お手持ちの計算尺の目盛りが「SI 尺」・「TI 尺」の場合は内尺法で、「S 尺」・「T 尺」の場合は標線法で計算をすることになります。ここで一般的な計算尺の場合は「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介した方法によって「S 尺」と「SI 尺」を入れ替えて計算することができます。「T 尺」と「TI 尺」も同様です。

当サイト管理人の手元にある日本製の計算尺の目盛りは、一般的な計算尺(ヘンミ製)が SI 尺・Ti 尺、円形計算尺(コンサイス製)が S 尺・T 尺でした。
そのためこのページでの計算例の紹介では、一般的な計算尺では SI 尺・TI 尺、円形計算尺では S 尺・T 尺を使う方法で説明します。

ST 尺については、目盛りを逆に振った STI 尺のある計算尺を一般的にあまり見かけませんので、どちらの計算尺についても ST 尺を使う方法で計算法を紹介します。つまり、標線法を使った掛け算の要領で計算します。

種類と角度によって場合分けが必要

三角関数の掛け算を計算するには、その種類(sin、cos、tan)と角度によって場合分けが必要になります。具体的には

1 \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\)、\( \cos 0^\circ ~ \cos 84^\circ\)および\( \tan 6^\circ ~ \tan 84^\circ\) の場合
2 \( \sin 6^\circ\)以下、\( \tan 6^\circ\)以下および\( \cos 84^\circ\)以上の場合
3 \( \tan 84^\circ\)以上の場合

で場合分けをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」「cos の計算(0°~84°)」で触れているとおり、\( \cos\) の計算では \( \cos \theta = \sin (90^\circ – \theta ) \) という公式を使って計算しますので、以降の説明では \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\) と \( \cos 0^\circ ~ \cos 84^\circ\)、\( \sin 6^\circ\)以下と\( \cos 84^\circ\)以上は同じものだと読み替えていただければと思います。

1 \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\) および \( \tan 6^\circ ~ \tan 84^\circ\) の場合

計算例1 \(62 \times \sin 27^\circ \)

(1)「62」なので D 尺の「6.2」にカーソル線を合わせます。

(2)SI 尺の \(27^\circ \) とカーソル線が合うように内尺を動かします。
円形計算尺の場合、S 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)SI 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.815」を示します。
円形計算尺の場合、S 尺の \(27^\circ \) にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.815」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
\(0 < \sin 27^\circ < \sin 30^\circ = 0.5\) なので、 \( \sin 27^\circ \) → 0.5 として概算を行います。
\(62 \times \sin 27^\circ \) → \(60 \times 0.5  = 30\) なので、答は 30 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「28.15」です。

角度が \(6^\circ \) から \(90^\circ \) の \( \sin\) の計算については「sin の計算(6°~90°)」もご参照ください。

計算例2 \( \tan 59^\circ 10′ \times 4.21\)

(1)計算式を\( \tan 59^\circ 10′ \times 4.21\) → \( 4.21 \times \tan 59^\circ 10’\) として、 D 尺の「4.21」にカーソル線を合わせます。

(2)TI2 尺の \(59^\circ 10′ \) とカーソル線が合うように内尺を動かします。
円形計算尺の場合、T2 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)TI2 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「7.05」を示します。
円形計算尺の場合、T2 尺の \(59^\circ 10′ \) にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「7.05」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
\(\tan 45^\circ\) から \(\tan 84^\circ \) の間では、値は1の位となります。 \(\tan 60^\circ  = \sqrt{3}\) なので、 \(\tan 59^\circ 10′ \approx \sqrt{3}\) → 2 とすると、 \( \tan 59^\circ 10′ \times 4.21\) → \( 2 \times 4 = 8\) となり、答は8 の前後であるとわかります。したがって、この計算の答は「7.05」です。

角度が \(6^\circ \) から \(84^\circ \) の \( \tan\) の計算については「tan の計算(6°~84°)」もご参照ください。

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2 \( \sin 6^\circ\) 以下および \( \tan 6^\circ\)以下の場合

角度が6° 以下の場合、sin でも tan でも計算方法は同じです。また、ST 尺を使う方法とゲージマークを使う方法のどちらでも計算できます。ST 尺の目盛りは下端が \(0^\circ 40’\) くらいまでなので、それよりも小さい角度の計算ではゲージマークを使うのが便利です。
「角度が6°以下の sin と tan の計算 」もご参照ください。

計算例3 \(466 \times \tan 2^\circ 35′ \)(ST 尺を使って計算)

(1)「466」なので D 尺の「4.66」にカーソル線を合わせます。

(2)ST 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)ST 尺の \(2^\circ 35′ \) にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.10」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta^\circ \approx 0.02 \times \theta \) なので、今回の計算の場合 \(466 \times \tan 2^\circ 35′ \) → \(500 \times 0.02 \times 3  = 30\) となり、答は 30 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「21.0」です。

計算例4-1 \(1.83 \times \sin 1^\circ 06′ \)(ゲージマークがC 尺にある場合)

(1)まず \( 1^\circ 06′ \) をすべて「分」単位に直します。
暗算で、 \( 1^\circ 06′  = (60 \times 1+ 6)’ = 66′ \) と計算できます。

(2)\(66′ \) に目盛りを合わせるために、D 尺の「6.6」にカーソル線を合わせます。

(3)カーソル線とC 尺の「分」のゲージマーク「\( \rho ‘ \)」が合うように内尺を動かします。

(4)このとき、C 尺の基線はD 尺上に\(\sin 1^\circ 26’\) の答を示しています。これに 1.83 をかければいいので、カーソル線を C 尺の「1.83」に合わせます。
カーソル線がD 尺上に答として「3.512」を示します。

(5)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta ‘ \approx 0.0003 \times \theta \) なので、今回の計算の場合 \(1.83 \times \sin 1^\circ 06’ \) → \(2 \times 0.0003 \times 70  = 0.042\) となり、答は 0.042 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03512」です。

計算例4-2 \(1.83 \times \sin 1^\circ 06′ \)(ゲージマークがD 尺にある場合)

(1)まず \( 1^\circ 06′ \) をすべて「分」単位に直します。
暗算で、 \( 1^\circ 06′  = (60 \times 1+ 6)’ = 66′ \) と計算できます。

(2)D 尺の「分」のゲージマーク「\( \rho ‘ \)」にカーソル線を合わせます。

(3)\(66′ \) なので、カーソル線とC 尺の「6.6」が合うように内尺を動かします。

(4)このとき、D 尺の基線はC 尺上に\(\sin 1^\circ 26’\) の答を示しています。これに 1.83 をかければいいので、カーソル線を D 尺の「1.83」に合わせます。
カーソル線がC 尺上に答として「3.512」を示します。

(5)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta ‘ \approx 0.0003 \times \theta \) なので、今回の計算の場合 \(1.83 \times \sin 1^\circ 06’ \) → \(2 \times 0.0003 \times 70  = 0.042\) となり、答は 0.042 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03512」です。

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3 \( \tan 84^\circ\)以上の場合

\(\tan 84^\circ\) 以上では、「三角関数の逆数の計算」で紹介しているとおり、
\( \tan \theta = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – \theta)}\)
の公式を使います。
ST 尺、ゲージマークのどちらを使っても計算できます。

計算例5-1 \(5.04 \times \tan 85^\circ 27’\)(ST 尺を使って計算)

(1)まずは式を変形します。
\( \tan 85^\circ 27′ = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – 85^\circ 27′)} =\) \( \large \frac{1}{\tan 4^\circ 33′} \) となることから、\(5.04 \times \)\( \large \frac{1}{\tan 4^\circ 33′} \) を計算します。

(2)D 尺の「5.04」 にカーソル線を合わせます。

(3)ST 尺の \(4^\circ 33′ \) とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)ST 尺の基線にカーソル線を合わせると、D 尺に答の「6.34」が示されます。

(5)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、\(5.04 \times \tan 85^\circ 27’\) → \(5 \times \tan 85^\circ 27′ = \) 50 ~ 500 となります。したがって、この計算の答は「63.4」 です。

計算例5-2 \(5.04 \times \tan 85^\circ 27’\)(ゲージマークを使って計算)

(1)まずは式を変形します。
\( \tan 85^\circ 27′ = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – 85^\circ 27′)} =\) \( \large \frac{1}{\tan 4^\circ 33′} \) となることから、\(5.04 \times \)\( \large \frac{1}{\tan 4^\circ 33′} \) を計算します。

(2)C 尺とD 尺の基線が合っているのを確認して、 \( \rho ‘ \) にカーソル線を合わせます。C 尺とD 尺のどちらに \( \rho ‘ \) があっても大丈夫です。

(3)\( 4^\circ 33′ \) をすべて「分」単位に直すと、暗算で \( 4^\circ 33′  = (60 \times 4+ 33)’ = 273′ \) となります。
カーソル線と、273′ としてC 尺の「2.73」が合うように内尺を動かします。

(4)このとき、C 尺の基線はD 尺上に\( \large \frac{1}{\tan 4^\circ 33′} \) \(= \tan 85^\circ 27’\) の答を示しています。これに 5.04 をかければいいので、カーソル線を C 尺の「5.04」に合わせます。
カーソル線がD 尺上に答として「6.34」を示します。

(5)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、\(5.04 \times \tan 85^\circ 27’\) → \(5 \times \tan 85^\circ 27′ = \) 50 ~ 500 となります。したがって、この計算の答は「63.4」 です。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

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