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「計算尺の使い方」まとめ
使用する目盛りについて
掛け算の計算方法自体は「掛け算のやり方 ~2種類の計算方法~」に記載したとおりで、「内尺法」と「標線法」の2種類があります。
お手持ちの計算尺の目盛りが「SI 尺」・「TI 尺」の場合は内尺法で、「S 尺」・「T 尺」の場合は標線法で計算をすることになります。ここで一般的な計算尺の場合は「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介した方法によって「S 尺」と「SI 尺」を入れ替えて計算することができます。「T 尺」と「TI 尺」も同様です。
当サイト管理人の手元にある日本製の計算尺の目盛りは、一般的な計算尺(ヘンミ製)が SI 尺・Ti 尺、円形計算尺(コンサイス製)が S 尺・T 尺でした。
そのためこのページでの計算例の紹介では、一般的な計算尺では SI 尺・TI 尺、円形計算尺では S 尺・T 尺を使う方法で説明します。
ST 尺については、目盛りを逆に振った STI 尺のある計算尺を一般的にあまり見かけませんので、どちらの計算尺についても ST 尺を使う方法で計算法を紹介します。つまり、標線法を使った掛け算の要領で計算します。
種類と角度によって場合分けが必要
三角関数の掛け算を計算するには、その種類(sin、cos、tan)と角度によって場合分けが必要になります。具体的には
1 sin6∘~sin90∘、cos0∘~cos84∘およびtan6∘~tan84∘ の場合
2 sin6∘以下、tan6∘以下およびcos84∘以上の場合
3 tan84∘以上の場合
で場合分けをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」や「cos の計算(0°~84°)」で触れているとおり、cos の計算では cosθ=sin(90∘–θ) という公式を使って計算しますので、以降の説明では sin6∘~sin90∘ と cos0∘~cos84∘、sin6∘以下とcos84∘以上は同じものだと読み替えていただければと思います。
1 sin6∘~sin90∘ および tan6∘~tan84∘ の場合
計算例1 62×sin27∘
(1)「62」なので D 尺の「6.2」にカーソル線を合わせます。
(2)SI 尺の 27∘ とカーソル線が合うように内尺を動かします。
円形計算尺の場合、S 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(3)SI 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.815」を示します。
円形計算尺の場合、S 尺の 27∘ にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.815」を示します。
(4)概算によって位取りをします。
0<sin27∘<sin30∘=0.5 なので、 sin27∘ → 0.5 として概算を行います。
62×sin27∘ → 60×0.5=30 なので、答は 30 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「28.15」です。
角度が 6∘ から 90∘ の sin の計算については「sin の計算(6°~90°)」もご参照ください。
計算例2 tan59∘10′×4.21
(1)計算式をtan59∘10′×4.21 → 4.21×tan59∘10′ として、 D 尺の「4.21」にカーソル線を合わせます。
(2)TI2 尺の 59∘10′ とカーソル線が合うように内尺を動かします。
円形計算尺の場合、T2 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(3)TI2 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「7.05」を示します。
円形計算尺の場合、T2 尺の 59∘10′ にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「7.05」を示します。
(4)概算によって位取りをします。
tan45∘ から tan84∘ の間では、値は1の位となります。 tan60∘=√3 なので、 tan59∘10′≈√3 → 2 とすると、 tan59∘10′×4.21 → 2×4=8 となり、答は8 の前後であるとわかります。したがって、この計算の答は「7.05」です。
角度が 6∘ から 84∘ の tan の計算については「tan の計算(6°~84°)」もご参照ください。
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2 sin6∘ 以下および tan6∘以下の場合
角度が6° 以下の場合、sin でも tan でも計算方法は同じです。また、ST 尺を使う方法とゲージマークを使う方法のどちらでも計算できます。ST 尺の目盛りは下端が 0∘40′ くらいまでなので、それよりも小さい角度の計算ではゲージマークを使うのが便利です。
「角度が6°以下の sin と tan の計算 」もご参照ください。
計算例3 466×tan2∘35′(ST 尺を使って計算)
(1)「466」なので D 尺の「4.66」にカーソル線を合わせます。
(2)ST 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(3)ST 尺の 2∘35′ にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「2.10」を示します。
(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
θ∘≈0.02×θ なので、今回の計算の場合 466×tan2∘35′ → 500×0.02×3=30 となり、答は 30 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「21.0」です。
計算例4-1 1.83×sin1∘06′(ゲージマークがC 尺にある場合)
(1)まず 1∘06′ をすべて「分」単位に直します。
暗算で、 1∘06′=(60×1+6)′=66′ と計算できます。
(2)66′ に目盛りを合わせるために、D 尺の「6.6」にカーソル線を合わせます。
(3)カーソル線とC 尺の「分」のゲージマーク「ρ‘」が合うように内尺を動かします。
(4)このとき、C 尺の基線はD 尺上にsin1∘26′ の答を示しています。これに 1.83 をかければいいので、カーソル線を C 尺の「1.83」に合わせます。
カーソル線がD 尺上に答として「3.512」を示します。
(5)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
θ‘≈0.0003×θ なので、今回の計算の場合 1.83×sin1∘06′ → 2×0.0003×70=0.042 となり、答は 0.042 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03512」です。
計算例4-2 1.83×sin1∘06′(ゲージマークがD 尺にある場合)
(1)まず 1∘06′ をすべて「分」単位に直します。
暗算で、 1∘06′=(60×1+6)′=66′ と計算できます。
(2)D 尺の「分」のゲージマーク「ρ‘」にカーソル線を合わせます。
(3)66′ なので、カーソル線とC 尺の「6.6」が合うように内尺を動かします。
(4)このとき、D 尺の基線はC 尺上にsin1∘26′ の答を示しています。これに 1.83 をかければいいので、カーソル線を D 尺の「1.83」に合わせます。
カーソル線がC 尺上に答として「3.512」を示します。
(5)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
θ‘≈0.0003×θ なので、今回の計算の場合 1.83×sin1∘06′ → 2×0.0003×70=0.042 となり、答は 0.042 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03512」です。
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3 tan84∘以上の場合
tan84∘ 以上では、「三角関数の逆数の計算」で紹介しているとおり、
tanθ=1tan(90∘–θ)
の公式を使います。
ST 尺、ゲージマークのどちらを使っても計算できます。
計算例5-1 5.04×tan85∘27′(ST 尺を使って計算)
(1)まずは式を変形します。
tan85∘27′=1tan(90∘–85∘27′)= 1tan4∘33′ となることから、5.04×1tan4∘33′ を計算します。
(2)D 尺の「5.04」 にカーソル線を合わせます。
(3)ST 尺の 4∘33′ とカーソル線が合うように内尺を動かします。
(4)ST 尺の基線にカーソル線を合わせると、D 尺に答の「6.34」が示されます。
(5)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、5.04×tan85∘27′ → 5×tan85∘27′= 50 ~ 500 となります。したがって、この計算の答は「63.4」 です。
計算例5-2 5.04×tan85∘27′(ゲージマークを使って計算)
(1)まずは式を変形します。
tan85∘27′=1tan(90∘–85∘27′)= 1tan4∘33′ となることから、5.04×1tan4∘33′ を計算します。
(2)C 尺とD 尺の基線が合っているのを確認して、 ρ‘ にカーソル線を合わせます。C 尺とD 尺のどちらに ρ‘ があっても大丈夫です。
(3)4∘33′ をすべて「分」単位に直すと、暗算で 4∘33′=(60×4+33)′=273′ となります。
カーソル線と、273′ としてC 尺の「2.73」が合うように内尺を動かします。
(4)このとき、C 尺の基線はD 尺上に1tan4∘33′ =tan85∘27′ の答を示しています。これに 5.04 をかければいいので、カーソル線を C 尺の「5.04」に合わせます。
カーソル線がD 尺上に答として「6.34」を示します。
(5)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、5.04×tan85∘27′ → 5×tan85∘27′= 50 ~ 500 となります。したがって、この計算の答は「63.4」 です。
計算尺に関する記事一覧
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