三角関数を含む割り算【計算尺の使い方29】


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「計算尺の使い方」まとめ

使用する目盛りについて

割り算の計算方法には「割り算のやり方と『位取り』」に記載したように、「内尺法」と「標線法」の2種類があります。
お手持ちの計算尺の目盛りが「SI 尺」・「TI 尺」の場合は標線法で、「S 尺」・「T 尺」の場合は内尺法で計算をすることになります。ここで一般的な計算尺の場合は「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介した方法によって「S 尺」と「SI 尺」を入れ替えて計算することができます。「T 尺」と「TI 尺」も同様です。

当サイト管理人の手元にある日本製の計算尺の目盛りは、一般的な計算尺(ヘンミ製)が SI 尺・Ti 尺、円形計算尺(コンサイス製)が S 尺・T 尺でした。
そのためこのページでの計算例の紹介では、一般的な計算尺では SI 尺・TI 尺、円形計算尺では S 尺・T 尺を使う方法で説明します。

また、一般的な計算尺で「DI 尺」が書かれている場合、SI 尺とDI 尺を組み合わせて計算することで、目外れしない内尺法で割り算が計算できます。

ST 尺については、目盛りを逆に振った STI 尺のある計算尺をほとんど見かけませんので、どちらの計算尺についても ST 尺を使う方法で計算法を紹介します。つまり、内尺法を使った割り算の要領で計算します。

種類と角度によって場合分けが必要

三角関数を含む割り算の計算は、掛け算の場合と同様その種類(sin、cos、tan)と角度によって場合分けが必要になります。具体的には

1 \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\)、\( \cos 0^\circ ~ \cos 84^\circ\)および\( \tan 6^\circ ~ \tan 84^\circ\) の場合
2 \( \sin 6^\circ\)以下、\( \tan 6^\circ\)以下および\( \cos 84^\circ\)以上の場合
3 \( \tan 84^\circ\)以上の場合

で場合分けをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」「cos の計算(0°~84°)」で触れているとおり、\( \cos\) の計算では \( \cos \theta = \sin (90^\circ – \theta ) \) という公式を使って計算しますので、以降の説明では \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\) と \( \cos 0^\circ ~ \cos 84^\circ\)、\( \sin 6^\circ\)以下と\( \cos 84^\circ\)以上は同じものだと読み替えていただければと思います。

1 \( \sin 6^\circ ~ \sin 90^\circ\) および \( \tan 6^\circ ~ \tan 84^\circ\) の場合

計算例1 \(57 \div \sin 39^\circ \)

(1)「57」なので D 尺の「5.7」にカーソル線を合わせます。

(2)SI 尺の基線とカーソル線が合うように内尺を動かします。ここで、次に計算で使うSI 尺の \(39^\circ \) の目盛りが目外れしないように、左基線を合わせるのがポイントです。
円形計算尺の場合、S 尺の \(39^\circ \) とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)SI 尺の \(39^\circ \) にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「9.06」を示します。
円形計算尺の場合、S 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「9.06」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
\(\sin 30^\circ = 0.5 < \sin 39^\circ < \sin 60^\circ = \)\(\large \frac{\sqrt{3}}{2}\)\(\approx 0.85 \) なので、 \( \sin 39^\circ \) → 0.6 として概算を行います。
\(57 \div \sin 39^\circ \) → \(60 \div 0.6  = 100\) なので、答は 100 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「90.6」です。

角度が \(6^\circ \) から \(90^\circ \) の \( \sin\) の計算については「sin の計算(6°~90°)」もご参照ください。

計算例2 \( \tan 18^\circ 25′ \div 4.06\)

割り算の場合、三角関数を何かの数で割るときは、その三角関数の値を個別に計算する必要があります。三角関数を個別に計算する方法は「計算尺の使い方」まとめページの三角関数についての記事を参考にしてください。

(1)\( \tan 18^\circ 25’\) を個別に計算します。
計算の前にD 尺の基線とT 尺の基線が一致していることを確認します。
T1 尺の \(18^\circ 25’\) にカーソル線を合わせ、D尺の目盛りから「3.326」を得ます。
TI 尺を用いて計算する場合、DI 尺がついた計算尺であればDI 尺の目盛りを読むことで計算ができます。TI1 尺の \(18^\circ 25’\) にカーソル線を合わせ、DI尺の目盛りから「3.326」を得ます。

(2)あとは普通の割り算の要領で、\( 3.326 \div 4.06\) を計算します。ここでは C 尺とD 尺を使って内尺法で計算します。
D 尺の「3.326」にカーソル線を合わせます。

(3)C 尺の「4.06」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)C 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「8.19」を示します。

(5)概算によって位取りをします。
\(\tan 6^\circ\) から \(\tan 45^\circ \) の間では、値は0.1の位となります。 \(\tan 30^\circ  = 0.5\) なので \(\tan18^\circ 25′ \) → 0.4 とすると、 \( \tan 18^\circ 25′ \div 4.06\) → \( 0.4 \div 4 = 0.1\) となり、答は0.1 の前後であるとわかります。したがって、この計算の答は「0.0819」です。

角度が \(6^\circ \) から \(84^\circ \) の \( \tan\) の計算については「tan の計算(6°~84°)」もご参照ください。

また、この計算例では(1)で TI 尺とDI 尺を組み合わせて tan の計算をしました。
tan の場合、\( \tan \theta = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – \theta)}\) という公式があることから、TI 尺の上についている赤い目盛りを読むことで、T 尺として使うことができます。つまりTI 尺上の赤い目盛りで \(18^\circ 25′ \) (TI 2尺の \(71^\circ 35′ \) )にカーソルを合わせ D 尺の目盛りを読むことで\( \tan 18^\circ 25’\ = 3.326 \) を計算できます。

ただしS 尺の場合、SI 尺の赤い目盛りを読んでもS 尺としては使えません。

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2 \( \sin 6^\circ\) 以下および \( \tan 6^\circ\)以下の場合

角度が6° 以下の場合、sin でも tan でも計算方法は同じです。割り算の場合、三角関数を何かの数で割るときは、その三角関数の値を個別に計算する必要があります。
また、ST 尺を使う方法とゲージマークを使う方法のどちらでも計算できます。ST 尺の目盛りは下端が \(0^\circ 40’\) くらいまでなので、それよりも小さい角度の計算ではゲージマークを使うのが便利です。
「角度が6°以下の sin と tan の計算 」もご参照ください。

以下では特に三角関数を何かの数で割る場合の計算例を紹介します。

計算例3-1 \(\tan 3^\circ 10′ \div 1.7 \)(ST 尺を使って計算)

三角関数を何かの数で割るときは、その三角関数の値を個別に計算するのが基本になります。

(1)\( \tan 3^\circ 10’\) を個別に計算します。
計算の前にD 尺の基線とST 尺の基線が一致していることを確認します。
ST 尺の \(3^\circ 10’\) にカーソル線を合わせ、D尺の目盛りから「5.52」を得ます。

(2)既にカーソル線がD 尺の「5.52」に合っているので、これを1.7 で割ります。
C 尺の「1.7」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)ST 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がD 尺上に答の「3.246」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta^\circ \approx 0.02 \times \theta \) なので、今回の計算の場合\( \tan 3^\circ 10’\) → \( \tan 3^\circ \approx 0.02 \times 3 = 0.06 \) です。\(0.06 \div 1.7 \) → \(0.06 \div 2 = 0.03 \) なので、答は 0.03 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03246」です。

計算例3-2 \(\sin 3^\circ 10′ \div 1.7 \)(DI 尺がある場合)

一般的な計算尺で「DI 尺」がある場合、次のような計算方法でも計算できます。

(1)\(\div 1.7\) として、D 尺の「1.7」にカーソル線を合わせます。

(2)カーソル線とST 尺の「\(3^\circ 10’\)」が合うように内尺を動かします。

(3)ST 尺の基線にカーソル線を合わせると、カーソル線がDI 尺上に答の「3.246」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta^\circ \approx 0.02 \times \theta \) なので、今回の計算の場合\( \tan 3^\circ 10’\) → \( \tan 3^\circ \approx 0.02 \times 3 = 0.06 \) です。\(0.06 \div 1.7 \) → \(0.06 \div 2 = 0.03 \) なので、答は 0.03 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.03246」です。

計算例4-1 \(\sin 0^\circ 52′ \div 0.23 \)(ゲージマークがC 尺にある場合)

計算例4ではゲージマークを使って計算してみます。

(1)\( 0^\circ 52′ \) なのでD 尺の「5.2」にカーソル線を合わせます。

(2)カーソル線とC 尺の「分」のゲージマーク「\( \rho ‘ \)」が合うように内尺を動かします。

(3)このとき、C 尺の基線はD 尺上に\(\sin 0^\circ 52’\) の答を示しています。これを 0.23 で割ればいいので、カーソル線を CI 尺の「2.3」に合わせます。
カーソル線がD 尺上に答として「6.57」を示します。

(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta^\circ \approx 0.02 \times \theta \) なので、今回の計算の場合\( \sin 0^\circ 52’\) → \( \sin 1^\circ \approx 0.02 \times 1 = 0.02 \) です。\(0.02 \div 0.23 \) → \(0.02 \div 0.2 = 0.1 \) なので、答は 0.1 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.0657」です。

計算例4-2 \(\sin 0^\circ 52′ \div 0.23 \)(ゲージマークがD 尺にある場合)

(1)D 尺の「分」のゲージマーク「\( \rho ‘ \)」にカーソル線を合わせます。

(2)先に\( \div 0.23 \) の部分を計算します。ただし、次の(3)で逆数の計算を行うことになるので、CI 尺を使うことに注意します。
CI 尺の「2.3」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(3)このとき、D 尺の基線はC 尺上に\(\large \frac{1}{ \rho ‘ }\)\(\div 2.3\) の答を示しています。これに\(\sin 0^\circ 52’ \) として 52 を掛けることになります。
カーソル線をD 尺の「5.2」に合わせると、C 尺上に「6.57」が答として示されます。

(4)概算によって位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介している角度6° 以下の場合の位取りによる概算が便利です。
\( \theta^\circ \approx 0.02 \times \theta \) なので、今回の計算の場合\( \sin 0^\circ 52’\) → \( \sin 1^\circ \approx 0.02 \times 1 = 0.02 \) です。\(0.02 \div 0.23 \) → \(0.02 \div 0.2 = 0.1 \) なので、答は 0.1 前後であるとわかります。したがってこの計算の答は「0.0657」です。

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3 \( \tan 84^\circ\)以上の場合

\(\tan 84^\circ\) 以上では、「三角関数の逆数の計算」で紹介しているとおり、
\( \tan \theta = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – \theta)}\)
の公式を使います。
ST 尺、ゲージマークのどちらを使っても計算できます。

計算例5-1 \( \tan 86^\circ 05′ \div 0.46 \)(ST 尺を使って計算)

(1)まずは式を変形します。
\( \tan 86^\circ 05′ = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – 86^\circ 05′)} =\) \( \large \frac{1}{\tan 3^\circ 55′} \) となることから、\(\large \frac{1}{\tan 3^\circ 55′} \)\(\div 0.46 \) を計算します。

(2)\(\large \frac{1}{\tan 3^\circ 55′} \) を計算します。
D 尺の右基線にカーソル線を合わせます。

(3)ST 尺の \(3^\circ 55′ \) とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(4)ST 尺の基線が\(\large \frac{1}{\tan 3^\circ 55′} \) の答(1.462)を示しています。(この答を読む必要はありません。)
ここで内尺に CI 尺がある場合、標線法の割り算で CI 尺の「4.6」にカーソル線を合わせれば答が出ますが、以下の図では C 尺しかない場合に内尺法の割り算で計算を続ける場合を示します。
ST 尺の基線にカーソル線を合わせます。

(5)C 尺の「4.6」とカーソル線が合うように内尺を動かします。

(6)C 尺の基線にカーソル線を合わせると、D 尺に答の「3.176」が示されます。

(7)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、\( \tan 86^\circ 05′ \div 0.46\) → \(10 \div 0.5\) ~ \(100 \div 0.5\) → 20 ~ 200 となります。したがって、この計算の答は「31.76」です。

計算例5-2 \( \tan 88^\circ 38′ \div 4.91 \)(ゲージマークを使って計算)

(1)まずは式を変形します。
\( \tan 88^\circ 38′ = \)\( \large \frac{1}{\tan(90^\circ – 88^\circ 38′)} =\) \( \large \frac{1}{\tan 1^\circ 22′} \) となることから、\(\large \frac{1}{\tan 1^\circ 22′} \)\( \div 4.91 \) を計算します。

(2)C 尺とD 尺の基線が合っているのを確認して、 \( \rho ‘ \) にカーソル線を合わせます。C 尺とD 尺のどちらに \( \rho ‘ \) があっても大丈夫です。

(3)\( 1^\circ 22′ \) をすべて「分」単位に直すと、暗算で \( 1^\circ 2′  = (60 \times 1+ 22)’ = 82′ \) となります。
カーソル線と、82′ としてC 尺の「8.2」が合うように内尺を動かします。

(4)このとき、C 尺の基線はD 尺上に\( \large \frac{1}{\tan 1^\circ 22′} \) \(= \tan 88^\circ 38’\) の答を示しています。これを 4.91 で割ればいいので、カーソル線を CI 尺の「4.91」に合わせます。カーソル線がD 尺上に答として「8.54」を示します。
この計算では、一般的な計算尺の場合CI 尺の「4.91」では目外れしてしまいます。そのため、「CIF 尺の 4.91」にカーソル線を合わせ、「DF 尺」の目盛りを読むことで答の「8.54」を得られます。
(目外れする場合の計算については「『目外れ』する場合の掛け算のやり方」もご覧ください。)

(5)位取りをします。
「計算尺での三角関数計算に関する予備知識」で紹介しているとおり、角度84°以上 89° 以下では tan の値は10 の位になります。そのため、\( \tan 88^\circ 38′ \div 4.91\) → \(10 \div 5\) ~ \(100 \div 5\) → 2 ~ 20 となります。したがって、この計算の答は「8.54」 です。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

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