aの -b乗の計算(a^{-b})【計算尺の使い方39】


広告/ Advertisement


「計算尺の使い方」まとめ

負の指数計算の方法は3種類

基本的な指数の計算方法は、お持ちの計算尺の目盛りに応じて 2種類あります。
LL尺がある場合と、ない場合の計算です。

さらに負の指数計算では、LL0x尺(赤の目盛り)がある場合はより素早く計算ができます。
LL0x尺はドイツ Faber-castell 製の計算尺 2/82 や 2/83 N にあります。

以下の計算例では、3種類それぞれの方法について方法1から方法3に分けて紹介します。

方法1 LL0x尺がある場合

LL0x尺、LL尺 および C尺(内尺法ではCI 尺)を使って計算します。
最後にLL0x 尺の目盛りに答が表示されます。

LL0x尺は、下の図に示すように LL 尺と互いに逆数の関係になるように目盛りが振られています。


読むべき LL0x尺の選択は「LL尺の目盛りの選択」が基本です。
この方法にしたがって、例えば LL2尺に答が示されることになった場合、その負の指数(逆数)は LL02尺に答が示されます。

方法2 LL尺がある場合

a の -b 乗を計算したいとき、はじめに LL尺と C尺(内尺法ではCI 尺)で a の b 乗を計算します。
次に、 a の b 乗の答の逆数を割り算で計算します。

方法3 LL尺がない場合

a の -b 乗を計算したいとき、はじめに下式の対数の性質を使って a の -b 乗の常用対数を求めます。

$$ \log_{10}{a^{-b}} = -b \log_{10}a $$

実際の計算の流れとしては、
① \( \log_{10}a \) を計算尺で求める。
② ①の結果に -b を掛ける。計算尺では bを掛けて、その答にマイナスをつけて負にします。
常用対数の計算は「常用対数 log_10 の計算」も参照してください。

その後
③ 10の \( \log_{10}{a^{-b}} \) 乗を計算して答を得ます。
10の指数は「常用対数の真数を求める計算(10 の指数計算)」で計算します。
特に指数が負の場合は注意が必要です。

LL尺がない場合の計算方法は、指数が正のときも同じです。
指数が正の場合の計算方法は「LL尺が無い場合の aの b乗の計算」で紹介しています。

————————————————————
広告/ Advertisement


計算例1 5の -2乗

簡単な例として、暗算もできる 5の -2乗(\( 1 / 5^2 = 1 / 25 \))を計算します。
計算方法を忘れたときに、簡単な例で計算してみるとやり方を思い出すのに役立ちます。

方法1 LL0x尺がある場合

(1)LL3尺の「5」にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の左基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「2」にカーソル線を合わせると、答が LL3尺上に出ることがわかります。
そのため、答がでるのはその逆数の目盛りである LL03尺です。

(4)LL03尺上に答の 0.04 が出ます。

方法2 LL尺がある場合

(1)最初に 5 の 2 乗を計算します。ここでは練習のため、A尺ではなく LL尺を使って計算します。

LL3尺の「5」にカーソル線を合わせ(図の①)、C尺の左基線「1」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(2)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「2」にカーソル線を合わせると、答が LL3尺上に出ることがわかります。

(3)カーソル線を C尺の「2」に合わせると LL3尺上に 5 の 2 乗の答「25」が示されます。

(4)(3)で得た 25の逆数、つまり\(1 \div 25\)を計算します。ここでは内尺法による割り算の方法で計算します。
D尺の「1」にカーソル線を合わせ(図の①)、25 として C尺の「2.5」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(5)C尺の右基線「10」にカーソル線を合わせると、D尺上に答の「4.0」が出ます。
概算で位取りをすると、\(1 \div 25 \rightarrow 1 \div 20 \)\( = 0.05\) なので、この計算の答は「0.04」です。

方法3 LL尺がない場合

はじめに \(5^{-2}\) の常用対数を \( \log_{10}{5^{-2}} = -2 \log_{10}5 \) として計算します。
次に10の \( \log_{10}{5^{-2}} \) 乗を計算すると答が出ます。

(1)\( \log_{10}{5^{-2}} = -2 \log_{10}5 \) を計算するために、\( \log_{10}5 \) を計算します。
D尺(円計算尺では C尺)の「5」にカーソル線を合わせて、そのまま L尺を見ると \( \log_{10}5 \) の答「0.699」を得ます。

(2)(1)で得た答を -2倍します。
0.699 として D尺の「6.99」にカーソル線を合わせ(図の①)、CI尺の「2」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(3)CI尺の左基線「10」にカーソル線を合わせると、D尺上に答の「1.398」が出ます。
概算で位取りをすると、\(0.699 \times -2 \rightarrow 0.7 \times -2 \)\( = -1.4\) なので、\( \log_{10}{5^{-2}} \) は「-1.398」であることがわかります。

(4)10の -1.398乗を計算します。10の負の指数計算は「常用対数の真数を求める計算(10 の指数計算)」の計算例3も参考にしてください。

計算したい数を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分けます。
-1.398 の場合、\( -1.398 = -2 + 0.602 \) となるので、計算尺では 0.602 の部分を計算します。
L尺の「0.602」にカーソル線を合わせてそのまま D尺(円計算尺では C尺)の目盛りを読むと「4.0」を得ます。

(5)位取りをします。
(4)より \(10^{0.602}=4.0\) だとわかりました。よって、
\(10^{-1.398} = 10^{-2+0.602}\)\(= 10^{-2}\times 10^{0.602}\)\(= 0.01 \times 4.0 = 0.04\) です。
よって、この計算の答は「0.04」だとわかります。

————————————————————
広告/ Advertisement



計算例2 3.14 の -0.67乗

方法1 LL0x尺がある場合

(1)LL3尺の「3.14」にカーソル線を合わせます。

(2)C尺の左基線がカーソル線に合うように内尺を動かします。

(3)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「0.67」にカーソル線を合わせると、答が LL2尺上に出ることがわかります。
そのため、答がでるのはその逆数の目盛りである LL02尺です。

(4)LL02尺上に答の 0.464 が出ます。

方法2 LL尺がある場合

(1)最初に 3.14 の 0.67乗を計算します。
0.67乗は2/3乗でもあるので「3/2乗・2/3乗の計算」の方法でA尺とK 尺を使って計算することもできます。ただしここでは練習のため LL尺を使って計算します。

LL3尺の「3.14」にカーソル線を合わせ(図の①)、C尺の左基線「1」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(2)どの目盛りを読むべきか確認します。
下の図のように、C尺の「1」から「0.67」(実際の目盛りは 6.7)にカーソル線を合わせると、答が LL2尺上に出ることがわかります。

(3)カーソル線を C尺の「6.7」に合わせると LL2尺上に 3.14 の 0.67 乗の答「2.152」が示されます。

(4)(3)で得た 2.152の逆数、つまり\(1 \div 2.152\)を計算します。ここでは内尺法による割り算の方法で計算します。
D尺の「1」にカーソル線を合わせ(図の①)、C尺の「2.152」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(5)C尺の右基線「10」にカーソル線を合わせると、D尺上に答の「4.645」が出ます。
概算で位取りをすると、\(1 \div 2.152 \rightarrow 1 \div 2 \)\( = 0.5\) なので、この計算の答は「0.4645」です。

方法3 LL尺がない場合

はじめに \(3.14^{-0.67}\) の常用対数を \( \log_{10}{3.14^{-0.67}} = -0.67 \log_{10}3.14 \) として計算します。
次に10の \( \log_{10}{3.14^{-0.67}} \) 乗を計算すると答が出ます。

(1)\( \log_{10}{3.14^{-0.67}} = -0.67 \log_{10}3.14 \) を計算するために、\( \log_{10}3.14 \) を計算します。
D尺(円計算尺では C尺)の「3.14」にカーソル線を合わせて、そのまま L尺を見ると \( \log_{10}3.14 \) の答「0.497」を得ます。

(2)(1)で得た答を -0.67倍します。
0.497 として D尺の「4.97」にカーソル線を合わせ(図の①)、0.67 として CI尺の「6.7」とカーソル線が合うように内尺を動かします(図の②)。

(3)CI尺の左基線「10」にカーソル線を合わせると、D尺上に答の「3.33」が出ます。
概算で位取りをすると、\(0.497 \times -0.67 \rightarrow 0.5 \times -0.5 \)\( = -0.25\) なので、\( \log_{10}{3.14^{-0.67}} \) は「-0.333」であることがわかります。

(4)10の -0.333乗を計算します。10の負の指数計算は「常用対数の真数を求める計算(10 の指数計算)」の計算例3も参考にしてください。

計算したい数を整数部分と0 以上1 未満の小数部分に分けます。
-0.333 の場合、\( -0.333 = -1 + 0.667 \) となるので、計算尺では 0.667 の部分を計算します。
L尺の「0.667」にカーソル線を合わせてそのまま D尺(円計算尺では C尺)の目盛りを読むと「4.645」を得ます。

(5)位取りをします。
(4)より \(10^{0.667}=4.645\) だとわかりました。よって、
\(10^{-0.333} = 10^{-1+0.667}\)\(= 10^{-1}\times 10^{0.667}\)\(= 0.1 \times 4.645 = 0.4645\) です。
よって、最終的な答は「0.4645」になります。

計算尺に関する記事一覧

当サイトで紹介している計算尺の使い方に関する記事一覧は、カテゴリーの「計算尺 / Slide rule」のほか「計算尺の使い方」まとめページでご覧いただけます。

コメントを送る / Send your comment

メールアドレスが公開されることはありません。 / Your e-mail address will be kept private.

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください